麻耶雄嵩あいにくの雨で (講談社文庫)講談社,1999


「雪の密室で死体を発見した高校生三人組。事件の真相とは?」十三章から開始されるトリッキーな構成です。で、その死体は三人組のうちの一人・祐今の父親だったりするわけです。
「クリーク」と呼ばれる調査員だった烏兎と獅子丸の二人は、雪でできた密室の謎だけではなく生徒会長の座を争う権力闘争にも巻き込まれます。現生徒会の内部情報を漏洩した人物を探し始めます。
ほかにも夜盗が現れたり死体が増えたりと謎が続出。でも、最初にトリックが明かされますし、謎がメインというより閉じ込められたような人物描写が魅力的なんです。日常の謎でもない限り推理小説って後味が悪くなるのがほとんどですが、麻耶さんのは輪をかけてひどいですな〜……って私はまだ二冊目ですが。
あと、「神様」のときほどではないにしても、謎がすべて明かされてないような。分からないままなのか、読み逃してるだけなのか。
学校を舞台にしているのに、一部有力者の利権争いを描いているので明るさはまったくないです。学校という舞台の特性を加味しても、閉鎖的過ぎですよ。それこそずっと雨が降ってて外に出れないような。


この小説が好きな人にお勧めする③
③ 錯誤のブレーキ② 放課後① 神様ゲーム
①麻耶さんの最新作。『神様ゲーム』表紙からすると児童向けに見えますが……。→感想
江戸川乱歩賞受賞作品。東野圭吾さんの『放課後』これも嫌らしい話です。→感想
③自動車事故を巡るお話。中町信さんの『錯誤のブレーキ』これも救いのない話です。→感想