森博嗣幻惑の死と使途 (講談社文庫)講談社,2000 Amazon


S&Mシリーズの六冊目。今度はマジシャンが事件に絡んできます。
「さっきの車は、何ていう名前?」とか聞く、ちょっと抜けてる犀川先生が素敵です。
そんな先生には、今回、妄想と幻想の違いについて語ってもらいました。この口調とか話題がたまりません。実際の理系学部の学生も、こんな会話を繰り広げているんでしょうね〜。
犀川先生の子供時代の針穴カメラは、ちょっと前に読んだ推理小説で出てきたので、何やら縁を感じます。
シリーズ物の醍醐味である、時間の経過を通しての人物の変化具合にくすぐられます。一巻だけでは、劇的なイベントでもない限りそれほど変化しない人間関係でも、長時間かけて微妙に変わってくるというか見えなかった部分が見えてくるというか……一回この楽しみを覚えてしまうと、もう抜けられなくなりますね。
ミステリの書き方は、何も斬新なトリックを使わなくてもいいんだなと思いました。ようは構成力・筆力にかかってくるんですね。推理小説でも一般小説でもそれは変わりないようです。
③ 平井骸惚此中ニ有リ② 旧宮殿にて① 地球儀のスライス
この小説が好みだった人へ、私がお勧めする三冊の本。
①森さんの短編集・第二弾。『地球儀のスライス推理小説だけじゃありません。難しすぎるのもありますが……。詩的です。
②ミステリの書き方の手本。三雲岳斗さんの『旧宮殿にて』奇抜なアイディアだけではなく、雰囲気で盛り上げてくれます。
③動機を求めるのは精神安定のためでしょうか? 田代裕彦さんの『平井骸惚此中ニ有リ』癖になる文体という点でも似ています。