三雲岳斗旧宮殿にて 15世紀末、ミラノ、レオナルドの愉悦 (カッパノベルス)』光文社,2005 Amazon


久しぶりに三雲さんの小説を読みました。レベリオン以来でしょうか。そんな私の期待を一心に受けていたこの物語は一級品でした。
あのレオナルド・ダヴィンチが探偵役となって物語は進みます。中世のヨーロッパが背景にあるので、浮かび上がる風景も優雅なものばかりです。
最初の話は高価な未完成の絵画が一瞬にして消えてしまうと言う話「愛だけが思い出させる」ダヴィンチが絵画の関する才能があったことを見せ付けられます。最初にある、ダヴィンチとボスに当たる宰相とのやりとりもおもしろいです。
続いて今度は脱出不可能な部屋からお嬢が逃げ出す話「窓のない塔から見る景色」いたずら好きな一面をもつダヴィンチに思わず萌えます続いて「忘れられた右腕」でも、ダヴィンチ無邪気な部分が見れます。ダヴィンチお気に入りの台詞は、八割がたの美術品の真贋を見分けるコツの話。中年の親父に萌えます。
パズル的な問題が提示される「二つの鍵」こういう論理的な思考で追い詰めていく話は大好きです。最後の皮肉が聞いた結末も素敵ですな。
マエストロが犯す殺人事件を扱った「ウェヌスの憂鬱」なんというか最後、犯人の心が壊れていく様(?)がいじらしいです。
空飛ぶ馬
どの短編も、小話を含むすべてが結末に収束する丁寧な作品ばかり。ダヴィンチの解決方法が、自分の専門知識を総動員していることなどから、北村薫さんの円紫さんシリーズを思い出します。べつに日常の謎を扱っているわけではないのですが。話の作り方というか、奇麗な文章の中に含まれる毒みたいなのとか。上品な作品で、そこに上質の毒が仕込んであるのかな。
続きがあったら世みたいなと思ってみてみると、どうやら前にもこのシリーズをだしていたようで。三雲さんを本格的に追っかけてみないといけませんね。楽しみです。