森博嗣封印再度 (講談社ノベルス)講談社,1997


森さんの理系ミステリ、S&Mシリーズ第5弾。まず、WHO INSIDEと掛けられたタイトルに惹かれます。章題も連なっていて(鍵は壷のなかに→壷は密室のなかに→密室は闇のなかに……と言った具合)きれいです。
さてさて事件の始まりは、壷の中に入っている鍵を取り出そうとするところから始まります。もちろん、普通のやり方ではとることができず解答は最後まで明かされません。
で、この謎を追っていた萌絵ちゃんが殺人事件に遭遇するわけです。出くわしたのは、密室の現場で、同じく置かれていた問題の壷。不思議不思議。
でも、今回の要は犀川先生と萌絵ちゃんの掛け合いでしょう。珍しく動揺する、しょげる先生に出会うことが出来ます。犀川先生も萌絵ちゃんも国枝先生もみんな人間ぽくなっていきますよ。先生と萌絵ちゃんの関係に重大な出来事が起こりますしね。進歩ですね、先生としては後退かもしれませんけれど。
最後の場面はなんとなく高田崇史さんの『QED 六歌仙の暗号 (講談社ノベルス)』を思い出しました。そう言えば、どちらもメフィスト関連の作品でしたね。
何気に私の中では国枝先生の株が上がってきています。長い時間をかけて、ガードがゆっくりと解けていく感じがするのです。