西澤保彦パズラー 謎と論理のエンタテイメント集英社,2004


西澤さんの小説は初めて読みました。SF設定とミステリを掛け合わせた小説の評判ばかり聞いていたので、この本に含まれている6題の短編が全部SF入っていないことに驚きました(笑)
1つ目は「蓮華の花」死んだと思っていた女の子が、生きていて同窓会に来ていたというところから始まる話。これはトリック云々より最後の一文が秀逸。私にとって、東野圭吾さんの『秘密 (文春文庫)』の最後と同じくらい印象に残る終わり方でした。
2つ目は「卵が割れた後で」アメリカが舞台の殺人事件。その中でも、古きよき刑事物でしょうか。隙や無駄のない展開がいいです。
続いて「時計じかけの小鳥」書店で買ったのに中古で、しかも謎のメモつきという一冊の本をめぐるお話。まあ、犯人のめぼしはかなり早い段階で気づきます。それでも、犯人当て以外の謎があるので問題ないです。そこにはかなーり毒が含まれています。読了後の爽快感はあまり望めません。もちろん、推理の展開は面白いのですが。
「贋作「退職刑事」」解説を読んだところ、どうやら都筑道夫さんの作品(シリーズ)『退職刑事 (1) (創元推理文庫)』へのパロディらしいです。都築さんの本は読んだことがないので分かりませんが、法月綸太郎さんの『都市伝説パズル―法月綸太郎の事件簿 (SUSPERIA MYSTERY COMICS)』を思い出しました。同じく安楽椅子探偵物ですし、タイトルがパズルつながりですし。今まで考えもしませんでしたが、案外自分には安楽椅子探偵の話が合うのかも。
そう言えば、今まで私は「パズル小説」というものを物理トリックが多用されている話だと勘違いしていました。どうして勘違いしていたのかは謎です。
5つ目は「チープ・トリック」またもやアメリカを舞台にした作品。今度は密室です。
これまでの物語とは、最初から肌触りが違います。残虐性やらが高いです。動機の部分でタイトルの「チープ・トリック」が絡んできます。
最後は「アリバイ・ジ・アンビバレンス」殺人事件が起こったとき、アリバイがあるのにそれを明かさない少女の話。そこから二転三転します。
これまたタイトルが動機の部分で密接に関係してくるとか? これが全6作品の中で一番、先が読めませんでした。
どの短編も興味深く読めて、すごくいい本だと思いました。謎と論理のエンタテイメントという副題に誘われて読んでみてよかったです。
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