The MANZAI

The MANZAI  Amazon
コミカル⑦燃える③
あさのあつこThe MANZAI (カラフル文庫)』ジャイブ,2004


中学二年生の歩と秋本が、文化祭で漫才版「ロミオとジュリエット」を行おうとする話。
一番最初の、秋本が歩にコンビを組んでくれと頼み込むところからして楽しいな。二人のやりとりがバカバカし過ぎて、くだらないのに思わず笑ってしまいます。コンビを頼み込むところだけに限らず、普段のやりとりもコテコテのギャグが散りばめられていて、どこまでネタか分からない感じ〜。


秋本の幼なじみであり、歩の思い人でもあるメグも序盤こそ目立たないけど、実にすばらしいキャラでしたよ。こういう女の子だろうと勝手に決めつけてしまった私の予想を、いい感じに裏切ってくれます。
クラスメイトたちもそれぞれいいところを持ってますね。恋愛も同姓同士のほうが純粋なこともあるかもしれないと言ってのける文芸部員の森口や頭がめっぽういい高原とか。クラスメイトを眺めていると、ときどきこんなやついたなーとか思ったりしました。そんな面子で文化祭を盛り上げていこうとする雰囲気が心地よいです。
実際に行う漫才も漫才とはいえないようなバカ騒ぎだけれども、実に楽しそうだ。でも、学生を卒業してしまう私にはもうこんなお祭り騒ぎをする機会がないかと思うと、ちょっと寂しくなりました。


もっともこの話でも、ウキウキすることだらけではなく、歩の家族のことなどの暗い部分も出てきます。それが随分と歩の生活に影を落としていますし。歩が塞ぎ込んだり、けんかをしたり、学校側の都合を押し付けられたりと、漫才企画も簡単にはいきません。
一番のネックは、歩が過去の出来事から、笑わせているんじゃなくて笑われているんじゃないのか、という疑念を持つことでしょうか。線引きをするのは難しいですが、そもそも歩の場合はフツーという言葉に囚われ過ぎているおかげで、言葉のキャッチボールを素直に出来ていないことが辛そうでした。
秋本と会話を交わしていく中で、歩がそんな殻をふっきろうとし、二人の間に信頼関係を築けるかどうかが見所。一人じゃ漫才はできません。
歩の傍にメグや森口や高原、そして担任の先生がいて本当によかったです。……あっ、ここは「一番大切な秋本を忘れてるだろ!」という突っ込み待ちのボケですからね〜。


あさのあつこさんの作品感想