壁井ユカコキーリ〈7〉幽谷の風は吠きながら (電撃文庫)メディアワークス,2005 Amazon


約一年ぶりのシリーズ新刊。後二冊ほどで完結するようなので、今回は初心に立ち返り久しぶりの旅の話風味です。話の構成・一章ごとに収められている話の区切り方なども最近のものよりは、一巻に立ち返った感じです。そういえば、風味に法律による規定はないらしいですよ。塩味風味とか。塩味と名乗るには、規定をクリアしなきゃいけないんだそうですが。……私は風味と書くことでごまかしているのだろうか?>何に?
ノリで書いるので脱線しましたが、楽しく読み終えました(戻)スクールランブル カレンダー2006
まずは、ラジオの兵長の記憶違いから起こるコメディで始まりました。シリーズ物はこの楽しみ、性格の入れ替わりなどのパロディ的なものがなくっちゃ。笑えるだけではなく、所々はっとさせられるような場面もありますが、二枚目の挿絵でスクランで出てくるような微妙な笑い顔のキーリを見れただけでも収穫です♪
そのキーリといえば、一巻とは心の持ちようというか依存度がかなり変わってきています。現在もその変化は進行中ですな。たとえば、以前では想像できないような決断を下していたり、驚くほどに自分を責めていたり。
キーリ 死者たちは荒野に眠る
変化といえば、登場人物たちだけではなく作者の壁井さんやイラストの田上さんも、以前とはかなり違った印象を私は受けます。壁井さんの描写も、一巻はトリッキーな文体も光っていましたが、さすがに物語が長く続くと文体トリックは仕掛けられなくなり、その代わり上にあげたキーリの(少女的)心理描写などが冴えてきていると思います。
田上さんのイラストも、一巻とはずいぶん違った雰囲気を持ち始めたなと思いました。まあ、田上さんは大賞を取ったとき絵を描き始めてまだ一年に満たなかったそうですから、雰囲気なども含め変わってきて当然かもしれませんけどね。
クライマックスが近づいているからか、後に引く終わり方になっています。この巻の話が一段落ついたところで気になる出来事を起こして、しかし最後はいつもの退廃的かつ透明な余韻を残して終わるところが憎いです(-ε-)