夜行観覧車

湊かなえ『夜行観覧車』双葉社,2010
湊かなえさんの作品感想

娘の癇癪に耐えつつ高級住宅街に住む遠藤家と、周囲からうらやましがられる家族だったのに殺人事件が起こった高橋家の両家の視点で描かれる物語。
なぜ殺人事件が起きたのか考えさせられつつ、じっとりと周囲の反応がいやらしくなっていきます。合間に近所の噂好きおばちゃんが登場するのですが、この女性も非常に共感がもてないキャラクターになっていますよ。

遠藤家の娘の描写で、友人とのメールのやりとりが３年近く前のメールを読み返していました。転校した際のやりとりだから保護していたのでしょうが、どれだけ今友達がいないのかしらんと泣きたくなりました。
また、男性陣の現場から逃げたくなる、近づかないようにするという心理に共感したかも。

互いによかれと思って行動しているのに、微妙に、けれども決定的にズレてしまっている価値観やそれにともなう行動の数々が、なんともいえない。
ただ終盤のまとまり方には人間ってたくましいなと思いました。

この小説が好きな人にお勧めする３

１、湊さんの小説『告白』映画にもなった薄気味悪い作品。→感想
２、宮部みゆきさんの小説「楽園」とある少年が描いていた一枚の絵から始まる話。→感想
３、貫井徳郎さんの小説『乱反射』少しずつのすれ違いが大きな悪意となる物語。→感想