ヴァンダル画廊街の奇跡
美奈川護『ヴァンダル画廊街の奇跡 (電撃文庫)』アスキー・メディアワークス,2010
美奈川護さんの作品感想
芸術が規制を受けている世界を舞台に、ビルなどに名画の模写を行うヴァンダルという組織の物語。電撃小説大賞・金賞受賞作です。
ヴァンダルと遭遇した少年やカジノのディーラーなど、芸術によって傷ついてきた人物たちを描きつつ、徐々にヴァンダルに関わる人物たちの物語へと、様々な場所・時代を通して踏み込んでいきます。
ヴァンダルによって描かれた絵画を心に留める人たちだけでなく、追いかける立場にある対策班にも影響を与え始めます。また、周囲の人々だけでなく、触れ合いを通して描き手であるエナにも成長が感じられて素敵です。
具体的にどことは指摘できないのですが、なんだかぬくもりに包まれるお話でした。……やってることは結構過激なんですけどね。序盤の雰囲気は大好きでしたし、終盤の決断に至るまでの話もまとまっていてぐーでしたよ。
この小説が好きな人にお勧めする3
1、岩田洋季さんの小説『月の盾』天才的な才能を持った絵描きの少女を見守るお話。→感想
2、深山森さんの小説『ラジオガール・ウィズ・ジャミング』規制されたラジオを流そうとするグループのお話。→感想
3、萬屋直人さんの小説『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』ゆるやかに人が消えていく世界のお話。→感想