スロー・リーディング その5
- 作者: 橋本紡,ヤスダスズヒト
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2002/12
- メディア: 文庫
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☆「お姉ちゃんとふたりきりになる」
和人が帰っただけで、毛布おばけのままではあるけれども、ここでもお姉ちゃんの呼称ですね。
△「静けさがのしかかってくる」
階段でのお茶会が終了し、片付けも終わったあとの話。少し前の文でも、「(片づけをしている間は)静けさを忘れることができる」とあるので、未明は静かなことや場所に空いてることに殊更不安を覚えているようです。
☆「すやすやと眠っている毛布おばけの脇を通り抜けて」
狂気じみた雰囲気はなく、赤ちゃんのような印象を受けます。まあ毛布に包まって眠るのは、普通の使い方ですね。
☆「あたしは立ちあがると、窓に歩み寄った。カラカラと音がするガラス戸を開ける。夏の重苦しい空気が押し寄せてきた。その空気には少しだけ雨の匂いがした。曇っているのか、空に星はひとつも見えない」
この一段は場面転換の意味合いがあるのかも。また、この窓を開けるという描写事態も面白いです。
まず「カラカラ」と耳で感じて、「重苦しい空気」を体感し、続いて「雨の匂い」を鼻で、最後は「星はひとつも見えない」と視覚からの描写です。このことから、同じ感覚の描写を続けないほうがいいのかも?
☆△「ふと、”幸せ”という言葉を思い浮かべる」「幸せとはなんなのだろう?」「どういうことなのだろう?」「今のあたしは幸せなんだろうか?」
場面転換の直後の言葉なので注目したいところ。幸せについての自問が続きます。主要なテーマなのだと思います。
また疑問文が3個続きますが最後だけ、「な”ん”だろうか?」とされています。主人公が女子高生であることを考えると、ぽろっと出てしまった感じの、最後の疑問が一番気になることなんじゃないかなと思われます。
☆「(常識では両親がいなくて不幸)でも、あたしはその不幸をなぜか実感できないでいた」
窓を開けたときに感じたものとは逆に、不幸は感じることができないとされています。この辺り対比関係として描かれているのかも。
△「いくら心を覗いてみても、そこにあるのはただの”からっぽ”だった」
何もないことを感じることはできないから、不幸と実感することができないとのこと。喪失感に不幸を感じるのだと思うのだけれども、このときの未明は違うようです。
☆「あたしはガラス戸を閉めると」
ガラスの開閉が心の動きと関連づけられています。
☆「静かな家」「眠りは、すうっと、穏やかにやってきた」
23ページの最後でもダメ押しのように「静か」が強調されています。ただこのときの静かは、そんなに悪いイメージはないですね。