先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!―鳥取環境大学の森の人間動物行動学

先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!―鳥取環境大学の森の人間動物行動学  Amazon
小林朋道『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!―鳥取環境大学の森の人間動物行動学築地書館,2007
小林朋道さんの作品感想
巨大なコウモリが侵入したか。……すばらしい。」など、なんともお茶目な先生の日常が綴られています。私の日常とは全然違うのですけれどもね。大学周辺には森や河川があるらしいです。
編集さんが一般人とのズレを意識してつけているのでしょうか、太字になっている箇所はたまらなく萌えます。動物もかわいいけど、それを見守る小林先生も萌えます。
大学の先生って、周囲となんか違う雰囲気持ってる人が多いような気もします。ヘビに肉を押し込んでいて指も口の中に入ってしまった話は笑えました。興奮と興味と焦りがない交ぜになっていて、すごくゾクゾクしましたよ。


神秘的でも泥臭くても、謎を見つけてしまうと中身がどうなってるのか知りたくなり、さらにはそれを調べるのに躊躇しないその姿勢に憧れます。
猿を追いかけているうちに、鳴き声で仲間に混じりたくなった先生や自分が悪いのに動物が悪いんだと言い張る先生はとってもキュートです。なんつか、私のツボのポイントを心得ていらっしゃる。
ヤギの角を切ろうとするなど、専門の先生でも知らないことが多いのね。むしろそっちのが多いのか。実地で体験してみてなんぼの学問なのかも。


コウモリ保護のメールを学生や職員に送るとか、周りの学生や職員も面白みのある人が結構いるようで。部屋に入り込んだ虫の死体を標本としている教授の部屋に、折り紙の動物をおいておく学生のユーモアにニヤリ。
とっても素敵な大学に思えてきますね。先生だけでなく、出てくる学生さんもあまりに人間臭くて面白い。動物好きでも嫌いでもね。さすがヤギ部がある大学なのです。


ある体験を通すことで、脳が関連する情報の感受性を高めるなど、行動学に関する話もあります。確かにブログを読み返してみても、この本を読み始めてから動物関連の記述が多くなったように思います。
こういう風に因果関係を見つけて、繋がりを見出し認識するのが得意だったり、秩序だったものを理解しやすいという傾向も、自分の行動を振り返ってみれば思い当たることが多々あります。感想文の書き方も関係あるかな。
島に1人ぼっちで暮らす鹿の話がありましたが、これも擬人化ですかね。擬人化は未成熟なものではなく、重要な思考形態らしいです。単純に覚えるより習性や特徴が印象に残りやすいとのこと。萌えキャラも同じかな。


ヒミズを飲み込んだヘビが、体に穴を開けて死んでいる様子から原因と過程を推察する話は、ミステリを読んでいるように惹きこまれましたよ。
生態系小宇宙を作り出し観察する、神様視点で見下ろす生活がすこぶる興奮を誘うという点には、ものすごく共感しました。私も似たような経験があったのでー。
何度もコバキチに会いに行った結果に爆笑しつつ、仕方ないよねと同情しつつ、最後はしんみりと締めくくられていました。おかしいなーと思いつつ読み薦めることができ、かつ意外に考えさせられる文章もありましたよ。


例えばマックを眺めていても、お腹がすいていてハンバーガーに目が行く人もいるだろうし、綺麗な女性を眺めてしまう人もいるだろうし、混み具合などからマックのもうかり具合を予想しようとする人がいるかも知れない。
本の中身とは直接関係ないけど、同じ風景を見ていても人によって注目する場所はまちまちなんだろうなと、そんなことを再確認。定点観測もいいけれど、色んな視点で見つめなおすこともたまには楽しいだろうな。