ぼくは落ち着きがない

ぼくは落ち着きがない  Amazon
癒し8コミカル2
長嶋有ぼくは落ち着きがない』光文社,2008
長嶋有さんの作品感想




中学生のとき、別のクラスの名前も知らない女の子から呼び出されるという出来事がありました。ただちょうどそのとき私は教室を出ており、女の子が呼びに来たよという話を聞いただけで。
行事関係に思い当たりはなかったので、もしかして告白かしらんと、冷静なそぶりをしつつ期待しておりました。ただ、その後呼ばれることもなく……なんだったんだろう。隣のクラスの同じ名字と間違えられたのか知らん。


この物語は、図書部員である望美の高校生活が描かれています。少し空想癖のある望美なのですが、気持ちの切り替えがうまく、部室の環境を眺めたはずなのに人生について考えたりとあっちこっちに思考が飛びます。
図書室というか、部室を舞台にまったりした部員たちの描写が面白いです。ひょんなことから定着してしまうあだ名だったり、内輪だけのブームなどなど、あっさり淡々とした日常があります。
コミカルなだけではありません。容赦なく冷酷に、でも周囲を見渡せばそこらに落ちているような人間関係がちゃんと存在しています。対立があったり冷戦状態だったり、でも傍にいたりするのは当たり前のことですよね。


コピー機に紙詰まりしないよう用紙を補充するやり方が妙にこびりつきます。大きな出来事よりも、こう下らない儀式のほうが頭に残るものですね。
本を大量に借りていく姿見えぬ転校生・片岡哲生も気になる存在。ナス先輩の小説も忘れちゃいけませんね。seiitiさんがこう書いているので、カバー裏の内容読まないとダメだよな〜。


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