七姫物語〈第4章〉夏草話

 七姫物語 第4章 夏草話 Amazon
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高野和七姫物語〈第4章〉夏草話 (電撃文庫)メディアワークス,2006
シリーズ感想
高野和さんの作品感想
空色の視線で俯瞰した風景が描かれるシリーズ4巻目。前巻の余韻で不穏な空気に包まれた空姫周辺とツヅミの様子に、ドキドキさせられました。
激動の時代であるはずなのに、急ぎ足であるようには感じられませんでした。……ただ、ゆったり、ゆったり、ゆったりと激しい変化の訪れがあります。想像以上に目まぐるしい変化が存在するからでしょうか、空姫の「ちょっと、どう思えばいいか分からなくなった」にひどく共感しました。


空姫の目に映されるツヅミの水路や町並みは、本当に綺麗でかけがえのないものに思えます。常磐姫の言葉で語られる先王の話も新鮮でした。
一宮・黒曜と二宮・翡翠の確執は相変わらず。これまでの流れだけを見ていると、七姫の中では珍しく敵役っぽい敵役である翡翠ですが、きっとこれから分岐するような流れがあるんだろうなと妙な期待をしています。
他の姫様の登場回数が増えてきましたが、少女のようでいて陰謀めいた雰囲気が消えない黒曜の魅力は衰えず。そんな彼女と相対してもバランスを崩さない空姫も好き。一巻に一度の逢瀬がもどかしくて愛くるしいです。


狂言回し的な役割をしているエヅと、姫様たちの会話は楽しいな。また、名前が登場していなかったけれども、衣装役さんも気になる存在です。目立たない脇役たちがこの物語の重要なエッセンスでしょう。
そして、空姫自身が動くシーンってほとんどないけれども、体験した出来事について彼女が考える過程が、このシリーズを読みたくなるポイント。「知らないことが怖かったから、ただ歩いてみました」分からないことが楽しい。