ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート

ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート  Amazon
癒し5コミカル3シリアス2 <ピックアップ4>
森田季節ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート (MF文庫J)メディアファクトリー,2008
森田季節さんの作品感想



焼いたフルーツってずるい味がする」出だしの一言で私を虜にしてしまう左女牛さんの物語。しょっちゅう思考がふらふらします。食いつくポイントが微妙にずれているかわいい子です。ラノサイ杯を見て手にとりました。


歌や記憶の問題、泣ける回数などイケニエビトの不思議な存在を語りつつも、バンド活動を始め至極真っ当な学生生活が描かれています。閉じられた世界ではありますが、程度の差はあれ学生生活ってこんなもんだよね。
限られた時間でのバンド活動など、胸にヒリヒリくる話がてんこ盛り。殺したり殺されたりと言う話がさらりと添えられており、パンツを盗んだり裸を見るなどのエロスが隠し味です。藤原の話で方向性が分からなくなり、終盤の展開はメロディが変わったかのようにハラハラするものでした。
そんなどこかに飛んでいってしまいそうなノートたちを、ベネズエラ・ビターというバンドが支えているわけで。いつ擦り切れてもおかしくないストーリーが、このバンドの存在で一定のリズムを刻みつつ進んでいきます。


口の中で溶けてなくなっちゃうように、食べた本人以外は覚えてもらえないチョコレート。冷蔵庫で凍らせておけば存在し続けるかもしれませんが、彼女たちはそれを是としません。溶け出すことを恐れず、熱い歌声で自身の甘さと苦さを訴えます。
女子高生にとって、刺激のバランス的に殺しと甘いものは惹かれあう関係なんでしょうか。まあ、最終的には甘い話のほうが好きだと思いますけれどもね。だって「シナモンの味がするんだもん」で締めくくられていますから〜。


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