パララバ―Parallel lovers

パララバ―Parallel lovers  Amazon
ミステリ5シリアス3コミカル2
静月遠火パララバ―Parallel lovers (電撃文庫)アスキーメディアワークス,2009
静月遠火さんの作品感想


死んだはずの恋人・一哉から電話がかかってきて、「綾、死んだのはお前なんだ」と告げられて戸惑うカップルの話。奇妙に絡み合ったお互いの死亡原因に不審な点が出てきて、その謎に挑むことになります。第15回電撃小説大賞・金賞受賞作。ジャケ絵はツボです。
二人が今まで出合ったことがないという設定が、切なさを倍増させてくれやがります。生きてるときも、死んでしまった後も電話やメールでしか会えないわけで。にゃんともいえないなー。


ただ、物語の展開的には切なさは少なめ。といいますか、二人の会話は綾がちょっととぼけた思考をしているせいもあり、背景を抜きにすれば楽しい部分の方が目につきます。和也の「」の一言で命令を下されてしまう二人の関係、特に小動物的な態度になってしまう綾が、ちょっと可愛らしいなと思ってしまいました。
普通すぎて違和感ないのです。二人が実際に出会ったらどうなるのかなと、想像の余地もありましたね。また、電話での拷問は、これだけニヤニヤできる状況はなかなかないなと、新鮮な味わいでうにゃごろしてました。
二人のすれ違いよりも、むしろ「鉢の花がさ……ほとんど枯れてたから」のように、いつもどおりのようでいて、変わってしまった周囲の風景によって悲しい気持ちがこみ上げてきたりも。


あの日 あの時 あの場所で 君に会えなかったら」なんて曲が頭の中で流れていました。出合ったことがないわけですし、そういう意味ではものすごいピュアな感情ですよね。私は恋未満の感情のように思いましたよ。
同じようでいて微妙に歪みが出始めている、それぞれの日常のその先を想像するとズシンとくるものが。こういう踏ん切りは女の子の方がタフなイメージがあるので、ぜひ一年以上経った時点での一哉の気持ちを続編として描いて欲しいな〜。てか、既に脳内では執筆中です。


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