さよならピアノソナタ 4

さよならピアノソナタ 4  Amazon
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杉井光さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)アスキーメディアワークス,2008
シリーズ感想
杉井光さんの作品感想
シリーズ4巻目にして完結編。バンドの将来を楽しく語るのも、クラスメイトなど外野が賑やかになるのもほんの序盤だけ。直巳に対しての真摯な問いかけなどが多かったです。
「あたしの気持ちもちょっとは考えてよね!」「バカナオありがと死んじゃえ!」「愛してる。ナオミのことが全部ほしい」「真冬を頼む。なにかあったら、教えてくれ」「あたしについてくるな!」「早く乗れ」「……いくじなし。なんでもっとはっきりしないの」「わたしのほんとにほしいものは、どうしてわからないの」「……あなたの、心臓の音を聴いていたい」
「きみの魂まで届くように、最初から説明しよう」「言葉だけでは人の心には届かないからなんだ。言葉をほんとうに魂の底にまで至らせる方法は、たった二つしかない」「いつになったら勇気が出てくるの? ねえ、そんなの待ってるだけじゃ一生出てこないよ」
「ナオはっ、どうするのかって訊いてるの」「なんでもなくない。ちゃんと言って」「なんで、言ってくれなかったの」「そんなの関係ないの! ちゃんと言って!」


こんなにも言葉が渦巻いているのに、直巳は「いつも歌が、言葉にならない想いを、そのまま伝えて――」「音楽は、なんて簡単に、想いを伝えてしまうんだろう」と音楽を称えつつ「なにを言っても先輩はひらひら躱すじゃないですか。だからやめときます」と言葉にしないわけで。
いつもそんな風だから、「ほんとうはわかっているのに、答えを言葉にすればいいだけなのに、声にならない」状態になってしないわけです。練習でできないことが本番でできるわけがない。


「あんたには謝る資格はこれっぽっちもないんだから、黙ってて」「なにも答えなくていいよ、少年。今きみの声を聞いたら、その唇をふさいでしまいそうだ」「なんにも言わないで!」となるのも自業自得ですよね。
どん底まで落とされるものの、そこで「言葉にならない想いは、どうしようもなく脆くて弱い」と気づき実感することができてよかったと思う。
無駄なタイミングで、無駄に気の利いたこと」だろうが「言っちゃいけないせりふの、たぶんナンバーワン」でさえも、気持ちは伝わるんだから。なんだかよくわかんないけど、私は涙が出ました。


だから、私もきちんと言葉にして伝えておきたいと思います。「直巳のばかへたれ! みんなを幸せにしない限り再読なんてしてやるかー!」