L 詐欺師フラットランドのおそらくは華麗なる伝説

L 詐欺師フラットランドのおそらくは華麗なる伝説  Amazon
燃える4コミカル4ファンタジー2
坂照鉄平『L 詐欺師フラットランドのおそらくは華麗なる伝説 (富士見ファンタジア文庫)富士見書房,2008
坂照鉄平さんの作品感想


顔のよさと口先三寸で女性を騙しつつ日々生活してきた詐欺師のバーンの物語。自然を支配するとも言われている、竜の息吹を操る竜徒の争いに巻き込まれていくことになります。極楽トンボさんの感想(2巻)を読んで手にとりました。


ひょんなことから嘘をつくと火を吐いてしまう身体になってしまい、挙句に権力者から狙われる身分になります。しかしそこで、「逃げるな、ビビるな、こんな時こそ根性入れろ! シム・リム・アビスパなんて大物に関われるチャンスだぞ……ここでモノにしなきゃ嘘だぜ。僕!!」と言い切り、成り上がるためにはったりかましつつ立ち上がる姿は格好いいと思ってしまったりも。
突然陰謀に巻き込まれて混乱している中でも、敵に追われているアーティアを守りたいと「少しだけいい格好をしてみたくなった。ただ、それだけ。」と思ったりするなど、軽い口先だけと思いきや意外に熱いです。
まあ、かっこいいことは言うのですが、演技していない普段はへたれ役者で笑いました。面倒を見ることになった竜徒のアーティアや腐れ縁のカロリアにいじられて、ヒイヒイ言ってるバーンがはまり役です。


竜斬りの異名を持つ団長ブロック・キャリバーを始めとした、開拓団の連中は敵役なんだけれども、団長の空気読まなさ具合がなんとも言えない味を出しています。これは憎めないのです。
また、人間を信用していなかったアーティアが、バーンやカロリアのおかげで打ち解けていく雰囲気はよかったです。フロンティアという即興の曲でみんなが盛り上がっているシーンは読んでいてスカッとしました。「ちぇすとぉッ!!」という展開にはニヤニヤしましたし。
……そんなわけで、ほんの薄いものだとしても徐々に信頼関係だって芽生えてきていたはずなのに、この辺りの信頼の糸がこんがらがりだすので読んでいて凹んだりも。誰もが目指しつつ望みはしていない結果は見えているのに、それなのに事態が動き始めたときはゲンナリしましたよ。
嘘ついてたら火が出るみたいに、分かりやすいものなら悩んだりしないんですけどね。嘘とも真実ともはっきりしないから余計辛いです。


ただ、開拓団に向かってバーンが最強の炎を吐き出す辺りからは心が躍りましたね〜。こんな燃える展開が待っているとは思いもよりませんでした。力をあわせるシーンは絵的にも言うことなし!
シリアスはあるものの基本コメディで、なによりも熱い物語でした。へたれ属性のくせにがんばっちゃうバーンが本当に魅力的でした。カロリアの行方が関わってくる話が二巻に続くようなので、そちらも楽しみにしておきたいと思います。


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