夏休み

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癒し8コミカル2
中村航夏休み (河出文庫)河出書房新社,2006
中村航さんの作品感想


マニュアルを作成する仕事をしているマモルと特許事務所で働くユキ。それと、マモルの義理の友達・吉田くんと舞子さんの二組のカップルの物語。
日常シーンの切り取り方がやっぱ丁寧だなと思います。「外泊の準備にはいつもなにか足りないような感じがつきまとう」とか、するする読めるけれども、思い出したようにひっかる部分もあるわけで。どの場面も綺麗に一つに収束していく感じ。


主人公・マモルの態度が全てを作り出しいるのかな。シニカルとか斜に構えている印象は受けないんだけれども、一つ次元の違う見方をしていると思った。子供っぽい視点だからとも言えるのでしょう。最強の動物を考えたり果たし状を手にとったりするし。
でも、本当に子供だったら家出への対抗策とかこういう発想にはならないだろうな。引き際は弁えている様子。期限を決めて子供に戻っているように見えました。煙草をすい終わるまで、みたいな。大学堂から工藤さんへと誓いの対象が移っていく空気が好き。


特許の話やマグネタイザーの話などの、道具立ても面白いな〜。吉田くんの家出の原因を様々につぶやくところとか、実際には笑わなかったけれども腹の中で微笑み成分が生産されました。序盤の一押しです。「それから彼女は、信じられないくらい優雅な仕草でビールを飲んだ」の風景を想像してうっとりしました。


今回は表現のリピートが多用されていた印象も受けました。終わらない夏休みの象徴だったりしたらかっこいいな。……でも、宿題は計画的に。


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