さよならピアノソナタ 3

さよならピアノソナタ 3  Amazon
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杉井光さよならピアノソナタ〈3〉 (電撃文庫)アスキー・メディアワークス,2008
シリーズ感想
杉井光さんの作品感想
シリーズ三巻目。カラーイラストを見ると分かるように、今回は合唱コンクールに体育祭に文化祭と多くのイベントを駆け抜けます。真冬とも仲のよい天才ヴァイオリニスト・ジュリアンも初登場。
どういう風に盛りだくさんの行事を絡めて行くのかと思っていたら、甘々な乙女の思いエビチリ風ニヤニヤ仕立てな勝負の絡め方が絶品でした。
勝負に勝つためにスパイを行うなど色々と策を練るクラスメイトたちも楽しかったし、それを迎え撃つ神楽坂先輩には痺れました。クラスメイトやジュリアンのバンドメンバーなど、名無しさんたちの会話群も楽しいな〜。
主に神楽坂先輩の仕掛けによって色んな勝負が繰り広げられますが、そこかしこに音楽が流れ出していて心地よいのですよ。


合唱祭において、指揮者を決める民主的な手続きには笑いました。これで普通と思い込んでいる直巳がやっぱりさすがです。
そもそもあり得ないほどのニブチンですからね、普通であるわけがない。みんなが好き好き状態じゃないかよ。「バンドにいる理由が一つだけじゃない」とか「編曲は任せる」といわれてるのを見ると、もううらやましいを通り越して穏やかなる心でいることができます。
そうそう、真冬の「あなたが」っていう呼びかけがかなりお気に入りです。


ジュリアンにふっかけられて、評論家という立場を確かめる場面も好きなところ。評論よりも大雑把な感想とはいえ、私も同じような系譜のことをやってるから余計に思い入れが強くなっちゃいますよ。
帯文である「ナオミは、真冬の、なんなの?」でもそうだけれど、自分の行動の意味を考えることって重要なのかも知れませんね。「好きなものは好き」と言い切るよりも、成長するためには大切か……。
自分の行動の意味を考えてみる→言葉にできない思いが出てくる→自然と行動する、というループがよいのかも。自己完結ならいらない流れだけど、他人と繋がるためにはさー。


まあ、言葉にできない思いを性格に相手へと伝えるのは至難のわざですからね。演奏から演者や作曲者の思いを把握するのは難しいことですし、世界レベルの鈍感さをもつ直己には直球の恋心さえも伝わりません。
普通さ、表紙みたいに女の子が楽器を抱えて見つめてきたら、「私の楽器(からだ)を奏でて下さい」っていう合図と気づくよね?