八日目の蝉

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シリアス7癒し3
角田光代八日目の蝉中央公論新社,2007
角田光代さんの作品感想


角田さんの長編は初めて。不倫相手の子供を誘拐し自分の手で育てようとする希和子の話。すごく淡々と描かれていて、座り心地がむずがゆい感じです。読売新聞に連載されていたもの。


行く当てもなく、友人の家や見知らぬおばさんの家などをフラフラしていた希和子たちがたどり着いたのは、エンジェルホームという宗教団体のような自己啓発セミナーのような場所。研修の内容だとかやってることの不透明さだとか、底知れない空気がありますな。
希和子たちは他にもエンジェルホームで出会った女性の故郷を訪ねてみたり、ラブホテルで働いたりと流れ行くままの生活を送ります。様々な人とめぐり合うのですが、それほど長く付き合う前に、警察の目を恐れて離れ離れにならなきゃいけないのがなんだか不憫でした。


第2章は誘拐された女の子・恵理菜の視点で書かれています。同じくエンジェルホームで幼少時代を過ごした女性と共に、検証の如く他人事のように過去の事件と相対していきます。
希和子のことを意識しすぎている恵理菜もなんか痛々しかったです。二人ともこんなに思い合っているんだから、出会わせてあげればいいのに思わずにはいられませんでした。


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