とある飛空士への追憶
犬村小六『とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)』小学館,2008
犬村小六さんの作品感想
この本を読んでいると、二人で逃げちゃえばいいじゃんと何度も思ってしまいますな。
ベテラン家庭教師をもってしても教育できないが、誰もが見とれてしまう容姿を持つ未来の皇妃・ファナ。身分は低いものの高い飛行技術を買われてファナを送り届ける大役を任されたシャルル。そんな二人が敵の攻撃を潜り抜け目的地まで向かう話。
deltazuluさんの感想を読んで手にとりました。
陶器人形のように無表情なファナが、周りの目がなくなったこともあり徐々に気持ちを出してくる過程はにやけちゃいます。バカ皇子のせいで作戦の難易度が高くなった辺りからかな。
嬉し恥ずかしなイベントを通し気持ちが繋がってくのは、何度読んでもいいです。二人で仲良くドボンとか釣りシーンは好き。何より二人っきりという設定がいいのですよん。
そんなおいしい場面の後には、問題もチラホラ出てくるわけで。生き残るために知恵と技術を振り絞る戦闘シーンは熱いです。戦闘描写もだけど二人の気持ちの移り変わりにはワクワクが止まらないんですよ。
また、ゴールで幸せになれないことが分かってるのも憎らしい。なにがって犬村さんが憎らしい。他に誰も憎めないからなんだけども。
シャルルともっと仲良くなればよかったと後悔する所は胸が詰まります。
「お願い、踊ってよシャルル」と頼まれるシーンはニャフンとさせられました。ニャフンってなんだよと思うけど、そんな言葉にできない感情です。男だったらニャフンされなさい。
なんにせよ、ファナのそのお願いに対するシャルルの答えは、追憶するに値するものですよね。……って、4月に読み終わっていたので感動を思い起こしながら本を眺めていて、ようやく表紙イラストのアレに気づいた。遅すぎやん。
この小説が好きな人にお勧めする3
1、鷹見一幸さんの小説「時空のクロス・ロード シリーズ」知ってしまったら逃げ出したくないのですよ。
2、荻野目悠樹さんの小説「撃墜魔女ヒミカ シリーズ」戦闘機乗りの魔女の話。
3、深山森さんの小説『ラジオガール・ウィズ・ジャミング』海賊放送局と軍の戦い。→感想