ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー  Amazon
燃える5シリアス3ミステリ2
伊坂幸太郎ゴールデンスランバー』新潮社,2007
伊坂幸太郎さんの作品感想



一度読み始めたら止められない、読み終える前に眠るなんてできない物語です。配達を仕事にしている青柳が首相暗殺の犯人として追われることになります。architectさんの感想を読んで手にとりました。
事件から二十年後の話で、不審な出来事がオンパレードとなってからの動き出しはすごい。普通の生活を送っている青柳に不気味な影が付きまといはじめるのですが、影の存在を青柳に教えてあげたくなりました。心配で心配でたまらなくなりますからね。


失踪する前の日常シーンは短いですが、青柳が彼女の晴子に別れを切り出されるところは変に共感できて痛かったな〜。くだらない話を共感してくれる相手がいなくなる件は、想像できすぎて辛いです。
でもさらに辛いのは、森田との車内での会話から始まるわけで。読み進めるのが嫌なんだけど、不幸なことなんて起きていないよねとわずかな希望を持ちつつ、それを確認しないとやってられないから読み進めるという矛盾。
話の筋なら「24」みたいなドラマや映画ですよね。緊張感漂う雰囲気を、自動で流れていく動画ではなく紙媒体でやれるとは。気になる部分を読み返したり自分のペースで読み進められるし、でも興奮が中断されることはないですし。読み返すことで興奮が加速することもあるんだね。
ところどころで挟み込まれる、雪掻き部など学生時代のちょっとしたエピソードが、本当に本当に遠い日に思えてきてぐさっと刺さってきます。雨の中セダンに乗り込んだとき、真相を晴子に言い当てられたときの青柳の恥ずかしさや照れ具合は、手に取るように分かりましたよ。


ダッシュボードに変なもの入れてる岩崎やメモ用紙に書かれた一言や不謹慎な父親の言動など、大きな黒幕が追ってくる絶望的な状況で希望を捨てずがんばれたのも周りの人のおかげでしょう。そして元をたどれば、青柳のいい人度の高さがきっかけであるのかも。
中盤以降の伏線回収はうならされます。ふとした点と点のつながりに、にやっとしたり、えっと驚いたり、うるっときたり。読んでいて泣いたりすることはありましたが、「あっ」とか実際に声を出しちゃったのはこれが初めて。
両親に届いた手紙や判子などのエピソードはありますが、絶対的なハッピーエンドではないですよね。でも絶望に落とされた終わり方でもないし……ひどい結末なのにどこか安心している私がいます。いい夢を見たい人にはおすすめです。


この小説が好きな人にお勧めする3
1 砂漠  Amazon2 リリアンと悪党ども  Amazon3 ひぐらしのなく頃に祭  Amazon
1、伊坂さんの小説『砂漠』こちらは青春真っ只中ですな。→感想
2、トニーケンリックさんの小説『リリアンと悪党ども』映画っぽい作りですがこちらはコミカル。→感想
3、ゲーム「ひぐらしのなく頃に」ホラーでありミステリであり……。→解シリーズ感想


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