MAMA

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シリアス5癒し3恋愛2
紅玉いづきMAMA (電撃文庫)メディアワークス,2008


魔術の名門サルバドール家の落ちこぼれトトと、封印されていた人喰いの魔物の物語。「MAMA」とその後日談ともいうべき「AND」の二編が収録されています。


MAMA」では、二人の出会いの場面とか面白かったな〜。無知は怖いというかなんというか、最初にトトが名乗った二つ名などピンボケした会話が繰り広げられます。そして辿りついた結論が、トトが魔物にホーイチと名づけママになってあげるというもの。
ホーイチはもちろん、トトも他人との接触を嫌がっており、どちらも頑なに二人の世界だけで閉じようとしている部分がありました。一人ぼっちが解消されてよかったという気持ちと、もう少し離れないとという複雑な気持ちでしたね。
周りにいる敵と戦い続ける、国王の末っ子の姫様ティーランの登場で変わる部分があるかと思いましたが、「わたくしには貴女だけ」「正しいことよりも、大切なものがあるのだ」など触れる世界は広がったはずなのに、関係は狭まるばかり。
それにしても、ティーランが想像以上にいいキャラしてたな〜。共感を得られるという点では主人公のトト以上の魅力です。


AND」秘法を城に盗みに入ったダミアンは、しかしティーランに見つかり逆に頼みごとをされる話。トトに対するホーイチのように、ダミアンは一緒に孤児院を出て兄と呼んでくれているミレイニアを旅の道連れに選びます。「虚言(そらごと)」が一つのキーポイントでしょうか。


魔力もないのに伝説の魔物を使役していたり、まだ少女なのにママになろうとしたり、あるいは真摯な言葉でさえも虚言といって敢えて距離をとろうとしたり。登場人物はみんな無理をしていて痛々しかったです。
どちらの話も、無理やり言葉で二人の関係を定義しているような感じがしていたのですよ。強がらなくても素直に出た言葉が一番安心できると思うんだけども。
でも、本物の母親が息子に伝えたい、残したいと思った言葉は心に染みてきましたね。


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