クジラの彼

クジラの彼  Amazon
恋愛⑤コミカル③萌え②
有川浩クジラの彼角川書店,2007


自衛隊への愛がいっぱい詰まっている恋愛小説短編集。六話収録されています。どの話も大変大変面白かったですよー。
クジラの彼」『海の底』のスピンオフ。潜水艦乗りの冬原と陸で待ち続けなければいけない彼女・聡子の話。やっぱり出会いの部分の「潜る」とか「クジラ」とか「いい顔」だとかのベタ甘さは大好きだな〜。
既読だけれども、学生だったころと社会人の今では共感度が違うかも。確かに学生時代のように毎日会うなんて芸当ができなくなって辛いですもん。いやでも毎週定期的に会えてる私はこの二人に比べてどんだけ幸せ者なんだろう……。私に遠距離恋愛はできなさそう。
ロールアウト」航空設計士の絵里と幹部・高科の話。最初に通路代わりに男子トイレを歩かされるなど、トイレトイレまたトイレな話でしたよ。
絵里の「どうしたもクソもないってのよ便所だけに!」という心の叫びには思わず笑ってしまったよ。最後のバカっぷりもかわいさに磨きをかけておりますな。
国防レンアイ」貴重な女性自衛官・WAC(ワック)でありながら鬼軍曹として名を馳せる舞子と彼女にこき使われる伸下の話。
なまらむかつく!」とか、舞子が酔った時にでる方言がかわいいんだってばよ。道産子万歳。彼女の尻にしかれる伸下ですが、最後は書き逃げするなんてなかなかやるじゃないか。
有能な彼女」これも『海の底』のスピンオフ。冬原のように器用に生きられない夏木と彼を慕う五歳年下の望の話。私も自分に自信がもてなくて不安になることが多いので、うにゃーな気分で読みました。これは終盤からの流れが特に好きですね〜。
脱柵エレジー」彼・彼女のために自衛隊の宿舎を抜け出す新人を見守る清田と吉川の話。清田の過去がぐさりときますな。
悲劇の主人公を演じるのもほどほどにしなきゃと思いました。計算外のことをしてみたいと思いつつ、実際にやってみると大した効果がなくてでも自分が疲れただけで……という経験がないことはないので。つい調子にのって口当たりのいいことを言ってしまうので気をつけないと。
まあこの話も最後は素敵なベタ甘ピュアさでしたが。やさぐれ具合がまたよし。面白かったです。この本の中で、お気に入りを一つだけ選ぶならこれかな。
ファイターパイロットの君」『空の中』のスピンオフ。パイロットの光稀と彼女を支える高巳が、娘に初キスの物語を聞かせる話。
高巳の妙に冷静な視点がなんか合ってるんだよねー。美人でかっこいい癖に恋愛部分では急に子供っぽいギャップを見せてくれる光稀には、惚れなきゃ損ですよ。


有川浩さんの作品感想