無銭優雅
お互い四十二歳なのに結婚もせずふらふらとしていた、花屋を友人と共にやりつつ実家に住んでいる慈雨と塾の講師をしつつ大量の本で作られた山に囲まれて暮らす栄の話。
マイペースに生きてきた慈雨が主人公で、特に大きな事件が起きるわけでもなく、起きたとしても軽く受け流されてる感じです。その代わり、二人の日常が濃い密度で描かれていますよ。
全力で恋愛に力を注げるのはうらやましいよ。そして、ノリつっこみも多い文章ですし、ものすごくかわいらしい慈雨を想像してしまいますね〜。拗ねてる姿もきっときゅんとくるに違いないのです。
そもそも、四十二という年がどうしたっていうんですか。「はんぱなお釣、もらわない覚悟なり」「太田氏、これでも一緒に飲んでくれますか?」なんて考えてる女性がかわいくないわけないじゃないですか。「斎藤慈雨!!」っていう名前だけで盛り上がれる二人の関係は素敵じゃないですか。
タイトル通り、お金はなくても幸せそうな生活をたっぷり堪能させていただきました。「姦通やら密通やら特殊な性的嗜好の共有などより、はるかに秘密として守り通したいのは、二人だけの取るに足りない遊戯」というのには共感。
そんな遊戯を眺めているのは優雅とは程遠い無粋な行為でしょうが、面白いんだからしょうがない。
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