本当はエロいミステリクロノ

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萌え⑳
久住四季ミステリクロノ (電撃文庫)メディアワークス,2007


トリックスターズ」シリーズの著者・久住さんが描く新シリーズ。一見してライトなミステリ小説のようですが、ものすごいトリックが仕掛けられていることに気づかれたかたはいるでしょうか?
実は、深く読むと別の物語が浮かび上がってくるのです。これからその感想を書き留めておきたいと思います。以降、『ミステリクロノ』のネタバレ全開なので、未読者は読むの禁止!





高校生の慧が天使の真里亜が出合ったことで始まる物語。
天使の真里亜は、クロノグラフという道具を人間界に落としてしまった罰で、天使から人間へと堕とされてしまったばかり。幼児なみの知識しかなく、またこれまでは無縁だった欲望すなわち食欲・睡眠欲、そして性欲にたいして耐性を持っておらず我慢することができません。
真里亜が持つクロノグラフはリザレクターという注射器で、相手を裸にさせる効果があります。お約束だね。


本当の理由を隠し、真里亜がかわいそうだから助けてあげたいと嘘をつく慧。授業を抜け出し、茶道部の部室でピストン運動をしたり裸になって真里亜に迫ったりしますが、その現場を妖しげな人物に目撃されます。
落ち着いて話をしようと、慧の裸を見ても動じない真里亜の手を引いて雑木林の中に分け入ります。すぐ目の前を女子の集団が通る最中にも関わらず、茂みの陰で里亜の頭を、口を押さえつけます。派手に音を立てるわけにもいかなかったのであまり奥まで入れなかったとかなんとか。最初は口をもがもがさせて抵抗した真里亜も、決して逆らおうとはしないわけで。素直さが仇になったか。


どんなどす黒い欲望だって法律を犯さずに叶えることのできるクロノグラフを、慧は真里亜と一緒に収集することになります。また、両親のいない慧の家で同棲生活を始めることになります。
真里亜の精神年齢は低いから、慧がトイレの仕方やお風呂の入り方を教えます。もちろん、慧はこのとき真里亜の裸を見てるわけで。真里亜は「ひぅ、っく、けい、なんか、きらい、だ」と「ふ、ふぐ……!」などといい声でないてくれるから、本当に加虐心を掻き立てられますね。
圧巻なのは、友人の武臣にした自慢でしょうか。「嫌がるもんだからマウントポジション取って口開けさせてむりやり食べさせてみた。口元をねばねばにして泣く真里亜は結構可愛くてね」……鬼畜としかいいようがない。


家で真里亜を預かり続けることに危機感を持った慧は、特殊な趣味を持つ夕凪の家に真里亜を預けようとします。もっとも夕凪の家に行く前に、真里亜を言葉巧みに騙して人気のない山の中に誘い出すわけで、やることやってるわけですが。
さらに言うなれば、真里亜が慧と離れることなどできるわけもなく、結局は慧の家に戻ることになりますし。純粋無垢な真里亜だから染まりやすかったんでしょうね。
家の中だけではなく外でも訓練は続きます。「くださいと言ってごらん」と慧に言われ、真里亜は逃げ出したい羞恥心に耐えながらも舌足らずな声で「……ください」と言わされたりも。ちょっとエロい。


そして、事件が起きてしまいます。スカートや下着が脱ぎ捨てられた状態で、男子トイレで発見される真里亜。真里亜は、その身に受けた仕打ちに人間というものに絶望します。
現場の状況から、慧はバレー部の顧問である日置がトイレで凶行におよんだと推理しますが、致命的なミスをしてしまいます。真里亜を助け出すことができた代わりに、日置に犯されたバレー部のキャプテン・十和子先輩が妊娠してしまうという辛い現実と向き合うことになります。
真里亜は十和子先輩の姿を見てますます人間不信に陥るわけですが、慧のがんばりによって立ち直ることに成功します。最後には、少し恥ずかしげに慧へ体をゆだねていたので、よかったよかった。


これは推理小説を模ったエロスの物語。
 

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