日曜日のアイスクリームが溶けるまで
清水マリコ『日曜日のアイスクリームが溶けるまで』小学館,2007
幼い頃は活発だった京子が、小さい頃遊びに行った競馬場近くの公園で出合ったアイス君。大人になって地味で物静かになってしまった現在の京子が、十歳のアイスくんと再び公園で会うというちょっと不思議なお話。
最初はほほえましいなとか思っていたんだけれど、思い出の中の少年そのままのアイスくんと会う度に少しずつ深みにはまっていく描写は怖いと思った。現実世界ともずれ始めてくるし、完璧に幻想世界に逃げ込むこともできない嫌な状況が出来上がっていくわけで。
「お互いに言いたいことを言えば言うほど、離れていく」って言葉もきついな〜。人間関係を築いていくのも難しいことなのですね。
劇っぽい感じがするし、色々と面白かったです。読んでて素直に楽しい作品じゃないけど、なんか考えちゃいました。
思い出も、アイスクリームと一緒で賞味期限とかないと思う。だから、いつまでも大切に保管しておけばいいんじゃないのかな。たまに取り出して味わえばいいわけですよ。ずっと外に出してると、品質がおかしくなったり、溶けちゃったりしますからね。
それに、いくら甘くておいしいからといって、いっぺんに食べるとお腹を下してしまうのでご用心。
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