断章のグリム④

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甲田学人断章のグリム〈4〉人魚姫(下) (電撃文庫)メディアワークス,2007


幻想新奇譚のシリーズ四作目であり、人魚姫の物語完結編。前回の続きで、広がっている物体の始末から千恵の傷の手当てなどで慌しいです。
一つ一つに対処しながらも、事件の全貌を暴くために人魚姫の物語の解釈を考えるんだけど、相変わらずの事ながらうまく推理が進みません。事件が起きる前に解決できてしまう探偵さんがいれば助かるんですけどね。ないものねだりをしても仕方ないんだけどさ。
ないものねだりに囚われてしまうと、それは狂気でしかありませんからね。千恵の母親・牧子の行動には薄ら寒いものがあります。目を背けたい。見ないのも怖いから見ますけど。


泡といい魚といい包丁といい、身近なものが出てくるので嫌な感じや痛さが簡単に想像できて気持ち悪くなる。魚卵とか白身とか単語の選び方もいやらしいったらありゃしない。
神狩屋の過去の話も語られるんですが、愛した人を亡くし最後のカレーシチューを眺めるシーンには心がギュッと鷲掴みにされた感じがしました。現実に味わいたくはないなと本気で思いますよ。
しかも物語の中ではさらに追い討ちをかける出来事もあり、もう勘弁してくださいです。あの辛すぎるカレーシチューは辛すぎる。こんなバカなことでも言わなきゃやってられません。


なんとも救いのない話です。主役の二人は生きたいと思っている限り大丈夫だと思うんですが、周りの八方塞感に影響されて堕ちてしまわないか心配です。頼りなさそうでも、神狩屋がいれば二人を守ってくれると思っていたんですがね。
身近な人物の歪さを見せ付けられることほど、気持ちが落ち込むことはないんじゃないかな。がんばって心を保ちつつ生き抜いて欲しいと願うことしかできません。


甲田学人さんの作品感想