ラビオリ・ウエスタン

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コミカル⑥燃える④
森橋ビンゴラビオリ・ウエスタン (ファミ通文庫)エンターブレイン,2007


webの感想を読んで手に取りました。お金に不自由なく暮らしていた女子高生・ハナヲが、両親を亡くしてし借金を返すために殺し屋になる話なので暗い雰囲気かと思いきや、ハナヲはなかなか気ままに生きているやつで自分の世界に突然旅立つこともあり、興奮して妄想モードに入っているときはノリノリになっちまうわけで、それが文章にも反映されているので改行されずにズラズラと並んでいて圧巻です。


対エロス防御力」があるからブルマを愛用するという、殺し屋じゃなくても十分個性的なハナヲですが、殺し屋の先輩であるラビオリやヤクザのクロスケ、無口な掃除人のフーチバ、巨乳なメイドちゃんのオリーブなど、ハナヲに負けない個性的な人たちに囲まれますよ。
仕事をするときは時代劇がかった口調になったりと殺しの最中もどこまで本気か分からないラビオリの相棒として、ハナヲはピーたん片手に殺し屋デビューをするんですが、ハナヲのコードネームの決め方が頼んで一番最初に来た料理名だもんだからまた面白い。
かわいそうな名前になって落ち込むハナヲだけれども、周りの人たちも料理の名前で統一されたコードネームだからいいじゃん、とは言うもののやっぱりかわいそうだな。
両親との仲は冷え切っていたからか、両親を失ったハナヲの悲しみはなかなか表に出てこないんだけど、時間差で来るんだよね。そこをうまい具合にフォローするラビオリたちがまたよくて、甘えること許されている、信頼し合ってる感じがいいですね。
そんな風に、ハナヲは周りに遊ばれつつ甘えつつからかわれつつ仕事をこなしながら生きていきます。嫌っていた両親を含めて、子どもって周囲の大人の背中を見ていきていくもんだなーと再確認しました。


下手に殺しすぎたから、終盤に有名な殺し屋・フヨウハイに狙われるはめになるんで大変やな〜と思ったんだけどハナヲやラビオリたちは楽しんでるんで、殺し屋さんの感覚はやっぱり分からんね〜。
間違っていようがどうでもいい」という言葉自体は他の本でも結構でてくるけど、ここまで間違ったことをしつつも言ってのけるのは、なかなかいないような気がするのよ。森橋さんのあとがきにある「自分が信じる確固たる文学を書こうと思った」と併せて、どれだけ世間とズレていようが迷惑をかけようが自分の信念に従って生きている人の生き様はなかなかにかっこいいものがあるとは思いつつ、理由もなく殺し屋さんに殺されたくはないなーと主張しておきます。


森橋ビンゴさんの作品感想


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