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燃える④コミカル③ミステリ③
柴村仁E.a.G. (電撃文庫)メディアワークス,2007


失踪者の行方を追ってくれと依頼されたゴドーと、彼に付きまとっているお嬢様学校の生徒キアラの話。
何かしらの苦味を持ているゴドーが殺伐とした謎を追う展開の中で、キアラとの心温まるやりとりがあると思いきや、一羽のカラスがやってきたことから急展開します。
人間関係も小出しにしか出てこないので背後関係を把握し切れませんし、空電体とか代替者とかパペットとか謎の単語が序盤から飛び交います。ゴドーは戸惑いますが、私も戸惑いました。
なんですが、読みやすい。すっきり頭に入ってくる。
頭の中で整理しやすい構成になってるのかな。物語の筋を見つけやすいので、徐々にしか出てこない情報も、全貌を見たいといういいスパイスになってると思う。


タナカとかいう変な吸血鬼やらゾンビやらの化物に襲われます。おとなしそうななりして、化物相手に大活躍するキアラがかっこいいですな〜。ギャップがまたそそられる。
そして、キアラのゴドーに対する扱いが泣けてくるほどにひどいよ。特に最初はゴドーが影のある大人という印象だったので落差が激しい。カノジョのお遣いをさせられる主人公なんて貴重だな。
乾いた空気が漂っているけど、ゴドーとラキア、そしてカラスのトリオが楽しい。くだらない掛け合いが笑いを誘ってくれますね。『こらえろ、こらえるんだゴドー!』なんて素敵なセリフも出てくるし、お店で人気者のゴドーをからかうやりとりとか軽快でいい。
驚き要員でもあるんじゃないかと私は疑っている、ゴローと刑事デュパルーの心の中を隠して探り合うのも笑った。こういうお遊びがうまいと思う。コミカルな会話もあるので、どことなく暗い話の雰囲気とのバランスが取れてて好感触。コミカルにいきながらも、謎の核心に向かって進んで行きます。


最後までほほを緩ませてくれましたよ。もちろんシリアスに攻めているところもあり、謎明かしといい具合に絡み合っていてよかった。ゴドーの中でも決着がきちんとついてますし。……人間って色々と複雑だな。そして、本当にゴドーは痩せ我慢が似合う男だ。
先に書いたように序盤で早々に予想を裏切られたし、その軌道修正した展開もまた裏切られました。でも、予想は裏切られたものの、期待を越える面白さを持った作品でした。これはシリーズになるのんだろうか。出るとしたら読みたいな。


柴村仁さんの作品感想


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