ROOM NO.1301 ⑦

ROOM NO.1301⑦ シーナはサーカスティック?  Amazon
恋愛⑦コミカル②萌え①
新井輝ROOM NO.1301(7) シーナはサーカスティック? (富士見ミステリー文庫)富士見書房,2005


恋に悩む高校生・健一が姉・蛍子とエッチしたりクラスメイトとまぐわったりするシリーズ七巻目。
今回のプロローグは、姉の佳奈に恋する日奈の話でした。完璧なまでのハッピーエンドではなく、かといって地獄のような出来事があったようには思えませんが、どうなったんだろう。どんな過程でどんな決着がついたのかうまく把握できません。情報の小出し具合にしびれます。


最初の紹介のごとく、やってることはエロいんだけどエロそのものよりも、健一の周囲の複雑な人間関係を眺めてるのが楽しいです。わりと落ち着いた物腰の健一が、人と触れ合うことで変化していくところを見たくなる。蛍子の悲壮な決意を聞く場面とか、やり手のプロデューサー・錦織とロールケーキを食べながら会話をする場面とか、禅問答ちっくです。真意が捉え難い点では一緒ですかね。
シーナが暴走してちょっぴりエロい話題を持ち出し、それを微妙に冷静な健一が受け流す掛け合いが何回かあったけど、この会話の流れは好きです。健一は、シーナとか綾とかズレたキャラとも話が通じるところがいいですね。
そんな健一の彼女であり、このシリーズでは珍しく奇抜な行動はしないので隠れがちな千夜子も、理由は分かりませんが、ずいぶんと存在感が増した印象を受けました。前巻で気にしていた「いくら条件を並べても、好きには届かない」にも、一応の決着がついていたからかな。今までは他のキャラに目がいってたけど、千夜子が一番かわいいのかも。正統派ヒロインも意外にいいかも知れない、とか思い始めましたよ。


引っ掻き回し役のツバメとか佳奈とか、不思議系のキャラじゃない人たちは現実にいそうな感じがします。だもんで、不思議系キャラも突飛さが軽減されている感じ。全部が全部ルームナンバーワールドじゃなくて、ちょっぴりリアルが混じってるところが魅力的。フィクションを入れる量のバランス感覚が好みなのかな。
そうそう、プロローグもそうだし本編ではあくの強い母親が登場したりと、物語的には佳奈・日奈コンビに焦点が当たり始めてました。でも、問題の核心に迫るのはまだみたいだし、控え気味だった他のキャラの問題も残ったままです。
広がっていた人間関係がどうたたまれていくのか分かりませんが、健一の迷いの物語はまだまだ続きそうです。どうなんだろう、部屋を出るときには普通になってしまっているのだろうか?


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