もう笑うしかない^^コミカルxラブ
森見登美彦太陽の塔 (新潮文庫)』新潮社,2006


第15回日本ファンタジーノベル大賞・大賞受賞作。京大の五回生であり休学中の「私」が、「私」を振った元恋人の長尾さんに対する研究を行う話。夢を失くしてしまった飾磨を筆頭に、超弩級のオタクの高敷や「みんなが不幸になれば、僕は相対的に幸せになれる」と言ってはばからない井戸、そして「私」で構成される四天王たちの日常が描かれています。
この四天王にしても、研究対象である長尾さんや自分をジロリと睨んでくる邪眼を持つ植村嬢にしても、個性豊な人物がやたらと出てきます。交わされる話の内容も雑多。精神の位置エネルギーだったり、サンタ鍋だったり、性欲をもてあましたジョニーをなだめようとしたり。生命の神秘に満ち溢れたゴキブリキューブには、、もうなんとコメントしていいのやら。
京大生ということで少し高いところから見ている文章によって、あほすぎることを描くこのリズムに慣れるともう笑うしかない。バカ騒ぎをする自分自身をも皮肉ってる「私」の態度も楽しくて仕方ないのですよ。クリスマスファシズムとして、ええじゃないか騒動を引き起こそうとする終盤もファンタジー大賞らしくて好き。ときどきくすっとしてしまう、失恋男の物語でした。
同著者作品感想類似バッチ
この小説が好きな人にお勧めする③
滝本竜彦さんの小説『NHKにようこそ!』無気力で引きこもる男の話。
西村賢太さんの小説『どうで死ぬ身の一踊り』作家へ執着しすぎるダメ男の話。→感想
白岩玄さんの小説『野ブタ。をプロデュース』いじめられてる男を人気者にしようとする話。→感想
① NHKにようこそ! Amazon② どうで死ぬ身の一踊り Amazon③ 野ブタ。をプロデュース Amazon