一年間に七万人も家出するんですね〜ラブxミステリ


佐藤正午ジャンプ (光文社文庫)』光文社,2002


秋山さんのレビューを見て気になっていました。りんごを買ってくるとコンビニに向かった彼女・南雲みはるの行方が分からなくなり、三谷が彼女の行方を追う話。失踪直前には無言電話がかかってくると三谷にもらしていたり、でも職場には休暇届が出されていたりと、なかなか魅力的な謎ですよね。
手がかりを得ても彼女を発見するには至らず、探すうちに姉のみゆきや大学時代の友人などと接触します。彼らの話から明らかになるのは、みはるの行方ではなく、半年間付き合っていても知らなかったみはる自身についての情報ばかり。私がこの立場だったら、早くもノックダウンされちゃいそう。
それでへこたれない三谷も、彼女とのやりとりで致命的なミスに気づきつつ先送りにして、結局は後悔したりしてます。まあでも、三谷に限らず男なんてそんなもんか? ダメだと分かりつつも行動に移さないことあるような。男と対照的に、女は人の機微を察するという点でしたたかさが目立った感じ。
読み終えてみると、彼女の失踪によって起きた三谷の気持ちの流れは特別なことではなく、失恋したらみんなこんな感じになるんじゃないかと思った。喪失感という点では同じだろうし。みはるの父と南雲家の関係もそうですが、どれだけ思い出を作っていようとも、縁なんて思ったより簡単に消えちゃうものなのかも知れませんね。
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