ハナシがちがう!―笑酔亭梅寿謎解噺 Amazon
最後のゲロネタには思わず苦笑いしたwミステリxコミカル <ピックアップ6>


田中啓文笑酔亭梅寿謎解噺集英社,2004


つっぱりな鶏冠頭の竜二が、笑酔亭梅寿という落語家に弟子いりする話。書影は文庫版。新聞で書評を見て、deltazuluさんとこでも見かけて、さらには読んでる雑誌でもこれを原作にした漫画の連載が始まったので、こりゃ読まないとと思いました。
破天荒な梅寿に入門することになった竜二と、不自然に切れた三味線の弦の謎を解くまでの話「たちきり線香」毒舌の外国人落語家に憤る竜二と、寄席の控え室で起きた殺人事件の顛末を描く「らくだ」稽古をつけてくれと梅寿に頼む竜二と、テレビに出たがらないベテラン漫才師の謎に迫る「時うどん」初舞台に上がる竜二と、人違いで殴られることになった原因を探る「平林新作落語に誘われる竜二と、殺人事件の真相を見抜く「住吉駕籠」梅寿から破門を言い渡される竜二と、梅寿の孫が誘拐される事件を描いた「子は鎹」若手の噺家のグランプリにノミネートされた竜二と、番組プロデューサーが求める謎の物体の話「千両みかん以上の七話が収録されています。
後半の必死で何かをつかもうとする竜二が心地よく、この竜二や師匠の梅寿などの人物がとても生き生きしています。型破りな師匠をはじめ、一般の感覚とは少しずれている落語の世界を、思う存分に味わえると思います。もちろん、竜二は最初から最後まで落語の知識について素人なので、落語を知らなくても十分楽しめました。
謎の解説をするときに、師匠の顔を立てる解決方法が面白い。タイトルからも梅寿が探偵役かと思っていたら、梅寿はワトソン役であり、竜二が探偵役ということで騙されましたよ。それぞれの解決の糸口に、章題の落語が関係してくる辺りはお見事です。
落研部員としては一話目から懐かしさ全開でした。三味の弦って切れやすいもんです。調弦しているときとか、よく私もやりましたよ。他にも、私が最初に初歩の初歩の話を覚えたとき一ヶ月かかったので、一週間で大ネタをこなそうとする竜二のすごさがよく分かりました。ましてや、私の場合は何とか話になればよかったけれど、竜二の場合はプロとして話すわけですからね〜。竜二が徐々に落語へとはまっていく様子が痛快でしたよ。
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