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高殿円『カミングアウト! (ヴィレッジブックスedge)』ソニーマガジン，2006　　　著者検索・類似検索

帯にもあるように、銃姫を書かれている高殿さんの小説。高殿さんの名前を見つけておっと手に取ったのはいいものの、考えてみれば銃姫の一巻は積んだままでしたよ。そっちも早めに読まなければ。
「コインロッカー・クローゼット」コインロッカーに服などをしまっておき着替えることで、またメールを使い分けることで別人になった気分を味わっている女子高生・さちみが主人公。さちみは平凡な母を嫌い、平凡な自分自身をも嫌っており家が好きではないです。別人になるためにはお金もかかるので援助交際でお金を稼いでおり……。
「オフィス街の中心で、不条理を叫ぶ」かわいらしい服が着たいというロリィタ趣味を隠しながら生活しているＯＬ・リョウコが主人公。二十九歳で独身を焦ってる、そんな彼女にもチャンスが巡ってきて……。ゴスロリや甘ロリ、オタロリにクラシカルロリなど色んな分類があるなんて知らなんだよ。
関係ありませんが、ここで出てくる屋上から主張するテレビ企画、私の中学校にも来てました。テレビで見ると十分程度なのに、撮影は二時間近くやってましたよー。テレビの収録って残酷だなと思ったのは、意中の相手に告白をした女の子の主張。だって振られてしまったから。だって撮り直しさせられていたから。だって放送されなかったから。
「恋人と奥さんとお母さんの三段活用」子育ても終わったがセックスレスな主婦・史緒が主人公。子育ての役目も終わり不安になります。そんな彼女は夫への不満から出会い系に手を出すようになり……。ここまで読んでようやくこれらの話がつながってることに気づきました。
「骨が水になるとき」いい年齢なのに独身のままでいるサラリーマン・臣司が主人公。彼が自分のお墓を買いに来たところから話が始まり、そこでリンゴという少女に出会います。リンゴと交流を深める臣司ですが……。「問題は、みんなそう信じてるってことじゃないだろうか」がこの話の、この物語全体のキーポイント。
「老婆は身ひとつで逃亡する」物に当たる夫に嫌気が差し、夫の定年退職を機に離婚を企んでいる妻・初恵が主人子。亮子と出会い自分の娘と同じ年代とコミュニケーションをとりながら、『あれ』の実行の準備に余念がなく……。
これら秘密を抱える五人が「カミングアウト！」と「エピローグ」で、苦しんでいた「神話」との戦いへと挑みます。スタイリッシュな構成・文章で、あとがきで高殿さんも述べられているように「スカッとする話」です。

この小説が好きな人にお勧めする③
①石田衣良さんの『4TEEN』四人の少年達の物語。→感想
②山下卓さんの『RUN RUN RUN』三人の女たちが北へと向かう物語。→感想
③成田良悟さんの『世界の中心、針山さん』別個の話がひとつの話へと収束する物語。→感想