喫茶店での話などはきゅんときたシリアスxシリアス


日日日ピーターパン・エンドロール新風舎,2006   著者検索類似検索


多くの賞を受賞してデビューした高校生作家さんの小説。ジャケットからの印象通りラノベっぽくはないです。折込広告に載っていたインタビューにも書かれていましたが、女子高生・真央の視点で語られる地の文はすべて丁寧語。私は日日日さんの小説を優しくない先輩とアンダカの二冊しか読んでいなかったのでアレですが、もっと読んでるかた向けの本かも。ちーちゃんにも出てきた登場人物がいるようですし。
現実と虚構に曖昧な感覚しか持てない真央が、本を読んでばかりかつ自殺したがりの少女「旅人さん」に出会うところから、幻想的な物語は紡がれ始めます。曖昧な感覚なので現実をうまく把握できなかったり、自分は誰かが読んでいる本の一登場人物ではないのかと考えたりします。ちなみに真央は著者と同じく高校生作家。
タイトルにもあるようにピーターパンの物語が度々出てきますが、原作のピーターパンは意外にグロイのな。読み始め当初はピーターパン役が旅人さんで、ピーターパンにネバーランドへと誘われるウェンディ役が真央だと思っていましたが、徐々に途中から逆転しました。外側では旅人さんがピーターパン役を、内側では真央がピーターパン役をやってるような入れ子構造なのかな。旅人さんはティンカーベル的でもあるし、まあ一人で複数の特性を持つのもありか。
最後に至るまでの伏線も微妙に張られており、最後はちゃんと回収するのでとんでもなく突き抜けた印象はありません。出だしの落ち着かなさに反して、落ち着くところに落ち着く話でした。これはこれでいい。


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