銀林みのる『鉄塔 武蔵野線 (新潮文庫)』新潮社,1997


第6回日本ファンタジー大賞・大賞受賞作品。投稿の際にやってはいけないとされている、資料添付をしても通過するという面白さが気になっていました。
小学五年生の少年は鉄塔に「75−1」と書かれていることに気づき、追っていけば「1」にたどり着くのではと考え行動する、ただそれだけの話。
過去の出来事を紹介するような淡々とした文体であり、ものすごい事件が起きるわけではありません。それでも納得のいく本だったと思います。文調からすでに終わってしまったことを思い返している哀しさみたいなのが漂ってきましたが。
鉄塔にも色々種類があるようで、文章の説明と写真を合わせてみているとためになります。日常生活にすぐ役立つかは微妙ですが(苦笑)
少年はお供に3年生の少年も巻き込むのですが、2人のやりとりが子供らしくて好きです。字の文は淡白なので会話部分が余計強調されてるような。嫌な役を押し付けあったり、「ひがしでん」を連呼したり^^
作業員のおっちゃんとかカントリークラブとか川とか制限時間とか……さまざまな障害が少年たちに立ちふさがります。旅が急に終止符を打たれてしまうところは辛いものがあります。
鉄塔の始まりを探しに行くと言う設定で、もう完全に一本決められちゃいました。行き先は分かるけど、どこまで続いてるか見えないこと。でも、鉄塔の番号が減っていくことで着実に近づいていることが分かること。着目がすばらしい!
映画もやっていたようです。原作とはラストが違うらしいです。


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