石田衣良波のうえの魔術師 (文春文庫)文藝春秋,2003


最近は景気も良くなり始めていますが、この物語の舞台はバブル経済がはじけ先行きが見えない99年です。就職浪人中の白戸はパチンコをやって生活している最中に出会ったある老人。この老人が彼をマーケットの世界に誘います。――雑誌に掲載された三話が載っています。
石田さんの本と言うことで手に取りましたが、まさか株の話だとは思ってませんでした。金融関係を狙っているのでタイムリーといえばタイムリーです。株の波って話ですね。
このじいさんはぽんと大金をだしてスーツを身なりを整えてくれたり、組の人とつながりをもっていたりとミステリアスです。私だったら怖くて乗れないや……証券は向いてないってことかね(-ε-)二千万円を組まで運ぶ仕事はなかなかドキドキしますし。
バブル期に販売された融資つき変額保険の話など、なかなか面白いです。これにあわせて、他行員の尻拭いのために謝るだけの描写など銀行の嫌な部分が前面に出されており、説明会でいい話ばかり聞いている私にはちょうどよかったかも。
白戸が出会う遥さんはなかなかいい女だと思うんですが。年上でも魅力的な人です。いやはや、『萌える株式投資』でも読もうかな。
投資家が扱うお金と血と汗でこさえるお金がまったく同じ値打ちって指摘も印象に残ってます。商売で大切なことの答えとして、「仕入れた値段より高く売ること」と白戸は答えているけれども、就活の面接のとき「働くこととは?」みたいな質問の解答としてはだめでしょうね、やっぱり。脱線しますが、グループディスカッションや作文と体系は違えど、この「働くこととは?」って質問よく聞かれるのですよ〜。
最後は魔術師も人間だったのだなと思えてくるから不思議。能力のすごさは変わりませんけどね。この老人もそうですが石田さんも魔術師のように思えます。これの最初の話が掲載されたのは99年のこと。石田さんも波にのるのが得意なかたなんでしょう。また、『4TEEN』のときも思ったけれども、法律を犯す行動をするときでもそれが肯定的な視点から格好よく書かれているんですよね。倫理的なものとスリルの書いていいギリギリのラインの判別。作家になるには必要な能力なんだろうな。
そうそう、石田さんと橋本さんにも妙なつながりが。新潮社の感謝会において舞台挨拶をする際に、石田さんの次が橋本さんだったんだとか。……いや、それだけなんですけどね(汗)


この小説が好きな人にお勧めする③
③ M.I.Q.② さおだけ屋はなぜ潰れないのか?① 4TEEN
石田衣良さんの『4TEEN』四人の中学生のお話。読んでて楽しいです。→感想
山田真哉さんの『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』経営感覚の入門書。固い話ではなく読みやすいです。→感想
③浅井信吾さんの『M.I.Q. 1 (少年マガジンコミックス)』高校生に株を教える漫画。株の楽しさ伝わってきます。