石田衣良4TEEN (新潮文庫)』新潮社,2005


直木賞受賞作品。内容は「四人の中学生が送るちょっとはずれた日常」八つの物語が入った連作短編集。
石田さんの長編は初めて読みました。非日常とは言えないまでも、退屈な日常とはいえない日々を過ごす少年たちが面白いです。主人公は退屈だと言ってるんですが、退屈なんですかね? 中学からは外れてしまった私には十分楽しそうなんですけどね。ただの憧憬なんでしょうか。
病気のナオトのために誕生日プレゼントを渡す「びっくりプレゼント」は実際にやったらまずいんでしょうが、あこがれますね。現実にはないだろうと思いつつも共感してしまうのがいいです。
拒食症の女の子の話である「月の草」と空気の読めない男の子の話である「飛ぶ少年」はどちらもけったいな雰囲気から始まるのに、徐々に純化されていき最後にはずいぶんきれいな話になります。子供っていう特質がなせる技なのかな。もう私には思い出せませんよ。
「十四歳の情事」は仲間うちで一番頭のよいジュンの恋の話。「それはすごくきれいな腐った魚みたいだったのだ」という一文がすごく印象的でした。
花火とおじいちゃんの話「大華火の夜に」では死の形について、おかまと噂されている少年・カズヤの話「ぼくたちがセックスについて話すこと」では恋愛の形についてそれぞれ書かれていました。この二つに限りませんが、少年達は妙に達観してるんですよね。私が中学生のときもこんな感じ方をしてたかな? もしかしたら、そういうフリをしていた可能性はあるかも。
ダイのお父さんの話「空色の自転車」は、なんか読んだことあるような。でも、初出の小説新潮は読んでないはずだし、なんなんだろう。特に父親に水をかけたところとか変に記憶として残ってるんですが……。
「十五歳への旅」で一応の旅は終わります。エロを求めて少年がさまよい歩くところがあるのですが(笑)私が始めてエロゲを買ったときはドキドキしませんでしたよ。もちろん中学生じゃなかったのも大きいでしょうが、エロを期待して買ったわけじゃないからかな〜(Key作品とかだし)多分そうなんでしょう。
なんていうか社会的に嫌悪感をもつような出来事と少年達の距離感がいい感じです。各短編ごとに主テーマが変わってますし、前の話のテーマが過大に持ち越されることはないような。刹那的と言い換えてもいいかも。
まあ、少年達が生活を続けていればいつか同じテーマ・問題にぶち当たるはずで、また会うことが決まっているものとの別離は気にしなくてもいいか。


この小説が好きな人にお勧めする③
③ スタンド・バイ・ミー② MISSING① I LOVE YOU
①恋愛にまつわるお話のアンソロジー。『I LOVE YOU』執筆人が豪華です。→感想
②文体が似ていると思います。本多孝好さんの『MISSING』すてきなミステリ短編集です。→感想
③四人の少年たちが旅に出る有名な物語。『スタンド・バイ・ミー コレクターズ・エディション [DVD]』細かい部分は忘れてしまいましたが、面白かったのは覚えています。