鷺と雪

鷺と雪  Amazon
癒し4ミステリ4泣ける2
北村薫鷺と雪文藝春秋,2009
シリーズ感想
北村薫さんの作品感想


白秋の全集の登場があまりに自然過ぎて、このときたった数ページで物語に引き込まれていたことに気づきました。シリーズ完結編。
茶目っ気のある英子とお兄さんの会話が面白い。ギャグがなくても会話で可笑しさを作り出されています。妹に流している曲で気持ちを汲み取られてしまうなど、お兄さんは何気かわいらしい。素敵な家族だと思います。
逆に子爵様が忽然と消える話では考えさせられました。現代のような無関心ではないけれど、昔の男性にとって家族の比重は低く、女性にとっては高すぎるような。ちょうどいいバランスってどこなんでしょうね。


写真の謎については、真相に思い至らずしてやられたなーという感じ。気の合う英子と道子との友情もくすぐったい。また、「願えば必ずかなうものです」という言葉へのベッキーさんの受け答えが印象深い。
重苦しい話から愛らしい話へと繋がっていくのですが、文章の余韻としては徐々に暗さがにじみ出て、不気味な足跡が忍び寄ってきます。
実在のことを書いてるんだろうなと思いつつ読んでいましたが、このことを設定背景ではなく、理解したのは最後のページを読み終えてからです。


小学生の頃、社会の授業で政党政治の終わり辺りの出来事を発表する機会がありました。そこで、一連の出来事を替え歌にした覚えがあります。読了後、この替え歌を思い出して泣きたくなってしまいました。
能天気に替え歌なんか歌っちゃって、と反省したわけではないのだけれど。よくわかんないけれど、胸がぎゅんとなり目頭が熱くなったのでした。