ファミリーポートレイト

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シリアス7鬱3
桜庭一樹ファミリーポートレイト講談社,2008
桜庭一樹さんの作品感想



ママに必要とされていることが誇り」とあり、見ていて気持ちいいものではない親子関係が描かれている物語。マコのコマコに対する「愛してる」の言葉も目を背けたくなります。


伝えられないけど、知識は吸収していくコマコ。そんな少女の視点で描かれていく親子の逃避行は、幻想的だけどなにもかもが幻のようで怖い。町を移動するたびに章が変わるのですが、イメージががらっと変わってしまいます。引きずる男とは対照的な、女だからでしょうか。
コマコは「もっともっとちいさくなぁれ」「魔女になっちゃいたい」と邪魔にならないよう日常からの乖離を目指します。その中でも、葬式花嫁の儀式は一番読み触りがざわざわしていました。
口が利けなくてもコミュニケーションが取れる考えていた少女と、目が見えなくても触れば分かるという大家さんの対話は興味深かったですね。


旅が終わり、コマコが学校に通い新しいお菓子を次から次へと食べる場面は圧迫感がありました。妙に力が入っていたように思います。
そして、客観性と演劇性を持った男の子や文学史についての深い知識がある父親、放浪に憧れるができない編集者などのメンバーが登場するのですが、これらが全員桜庭さん本人のように思えてくるから不思議。
文壇バーでアルバイトを始める辺りから、私小説的な雰囲気があったからかも知れません。「幸福から立ち直る」のように、人はみんなフィルターを持っていて、過去を振り返り昔と比較しながら生きて行かざるを得ないかも。


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