断章のグリム 7

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ホラー4癒し3鬱3
甲田学人断章のグリム〈7〉金の卵をうむめんどり (電撃文庫)メディアワークス,2008
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ホラーシリーズ七巻目にして初の短編集。神の悪夢ではなくわりと普通の泡禍についての話らしいです。いやどこが普通だよと突っ込みたくなるけど。
よくばりな犬」水に自分の顔ではなく未来の結婚相手が映し出されるという話を信じ、それを実行した少女にまつわる物語。和製ホラーに水はかかせないみたいなのをどこかで聞いた気がしますが、これはもろそれですね。水に近づきたくなくなります。
そして迫る剃刀……。想像しただけで死にそうなんですが。気味が悪いというか気持ち悪いです。


アリとキリギリス」明るい比奈実と真面目な美幸という、何から何まで対照的だけれども親友である二人の少女の物語。
これもぞっとするな〜。こちらは気持ち悪いと言うより、ちょっとしたすれ違いがこんな結果を生むと言うそのものに嫌悪感が。美幸のプライドが砕かれた瞬間の絶望には参りました。比奈実も美幸もいい子だから二人とも幸せであってくれればよかったんに。


そしてトリを飾るのは「金の卵をうむめんどり」……しゃれのひとつでも言わないとやってられない気分になれます。収録されている三話の中でダントツでえぐいです。ちなみに、雪乃の過去の話なので風乃も生きてる状態で登場します。
雪乃の友達が母親の狡猾な手口で居場所をなくしていく過程は心苦しいし、父親がなんとかしてやれよと憤っていたのですが、指輪を捜し歩く場面になって思わず吐き気が。
いや、これまでのシリーズで登場してきた惨劇に比べれば指輪探しはまだ被害的にはまし……あくまで比べればですが……だけども、探しているときの少女の心中を思うと。読むのが嫌になる。
風乃は生きてるときから超越的な雰囲気がありますね〜と惨劇から目を背け気味な感想で締めくくりたいと思います。読むのがつらくなってくるけど、面白かったですよ。