鳥籠荘の今日も眠たい住人たち③

鳥籠荘の今日も眠たい住人たち③  Amazon
コミカル④癒し④シリアス②
壁井ユカコ鳥籠荘の今日も眠たい住人たち〈3〉 (電撃文庫)メディアワークス,2007


住人たちがどこへ消えていってしまったのかも気になり始めるシリーズ三巻目。一つ一つの短編はそれぞれ独立しているし、ちょっとしたつながりもあります。


第1話 加地くんちと山田さんち」パパは猫の着ぐるみの山田家と、その猫の着ぐるみさんに恋してしまった加地家の母親、そして息子・梢太の話。母親の男運のなさを嘆く梢太くんがかわいいな。もちろん、気が強そうで実は家庭的な面も持ち合わせる華乃子のかわいさには劣りますがー。
また、パパを愛してやまない華乃子ときぐるみパパを怪しげな目でみつめる梢太のやりとりが、子どもらしくてほほえましく楽しい。かぼちゃパンツを握りこんでしまったあたりも面白かったです。……華乃子のパパさんの謎は深まるばかりだけどね。
第2話 明日夜9時、と言わせるまでに2週間かかった、というだけの話」前巻のひきでぎくしゃくした関係になっているキズナと浅井が、停電でエレベータに閉じ込められてしまう話。章題が内容を表していますね〜。この辺りの鞘当も俄然、興味が出始めてきましたよ。


第3話 アッサム・メレンをミルクティーで」これまでの短編の裏で起こっていた殺人事件の話。殺人事件の容疑者として浅井が連行されてしまい、由起の忠告を無視してキズナは手がかりを求めて一人で動き始めます。そんなキズナが出合ったつかみ所のない少年・ロミオとの話がメイン。
切なく痛い話は何度読んでも自分のウィークポイントだと思うな。まあ、団結力が薄いという印象が強いホテルの住人たちですが、変なところで強い団結力を見せてくれたところはよかったなー。ノリの良さは大事です。
こぼれ話 着ぐるみには着ぐるみを?」最後のおまけ。華乃子のパパさんのデートを追跡する着ぐるみ三人組の話。みんな着ぐるみという発想はなかった。


私にとって読めば読むほど世界にはまり込めてきているシリーズですが、しきりに、住人たちはもうホテルいないことが強調されます。どこへ行っちゃうんだろう。鳥籠を飛び出して、自由に空を駆け巡っていることを願いたいところ。あんま想像できないけど〜。
浅井とキズナのカップルの行方も気になりますね。ずいぶん遠回りしちゃいそうなので、ここは一発キスでもして欲しいところ。うーんでも、キスしたらシリーズが終わっちゃいそう。なにせ、眠りを覚ますのはキスだと昔から決まっていますからね。


壁井ユカコさんの作品感想