カレイドスコープのむこうがわ
三木遊泳『カレイドスコープのむこうがわ (電撃文庫)』メディアワークス,2007
第6回電撃hp短編小説賞・銀賞受賞作を含む五話が収録されている連作短編集。スーツ姿がばっちりきまっている祓い師・淑乃のとその使い魔・小夜に、不思議な出来事へと巻き込まれ小突き回される同調者・道弘の物語。
「第一話 チョコと花びら」異形のものを祓う淑乃ですが、淑乃自身は異形のものを視ることが出来ないので、同調者の協力が必要だと説明されます。同調者は異形のものを見ることが出来、かつ伝えることができるので。
そんな話もありつつ、帯にも使用されているけど、委員長・志帆から言葉「義理じゃないけど、チョコいる?」が出てきたり。これは破壊力が高いなー。素クールでしたっけ? それに、淑乃の黒いレースの下着も破壊力高いなー。
でも、道弘はほとんど動揺しないんですよね、日常場面にしても非日常場面にしても。淑乃から色々命令されたりもするんだけど、いまいち緊張感がなく流されるままに生きているので、適当君だなーという印象でした。
「第二話 廃墟の核心」病院に根付く濃い瘴気を祓おうとする話。相変わらず道弘は、ふらふらしてるやつなのに何故か志帆には好かれていて、図書館デートとかしちゃったりも。
嫌なものを見せられてしまうけど、信頼されているのを感じたりして、ちょっぴり成長したような気がします。
「第三話 はじめての遊園地」家庭環境のおかげで何事にも丁寧な受け答えをする閑也と、交通事故にあった妹・唯の話。現世に留まり続ける唯の気持ちを晴らすために、みんなで遊園地に遊びに行きます。
お兄ちゃんお兄ちゃんといってベタベタする兄妹なんだけど、だけど微妙に気持ちのすれ違いがおきてるんですよね。強引な解決法はグッドです。最後の志帆の登場もよかったな。かわいくてよしよししたくなっちゃう。
「第四話 子持ち主婦襲来」文子という謎の女性に道弘が拉致される話。とぼけたことしか言わない文子がプリチーですが、何故か道弘は肝試しをやることに。
随分と道弘が感情豊かになってきたように思います。淑乃と小夜に対して怒ったりとかも、これまではしかなったのに。さらには、「僕は認められたいと思い始めている」なんて思いがでてくるとはね。段々といい男になっていきますよ。
「第五話 再開のしくみ」こどもきもだめし大会での話。道弘の過去の話なども絡められています。
昔の友達との対話がメインになるんですが、いいなこれ。ノスタルジックな雰囲気になってます。そしてこれまた、志帆がいい味出してますねー。
最初の話とかは共感とかできなかったけど、やっぱり読んでみてよかった。自分を客観的に眺めすぎてるきらいがあった道弘の変化が面白い。同調をするということは、相手の気持ちを察するってことだからかな。
ちょっと不思議な出来事に遭遇しつつ、様々な経験を通して主人公が変化してくストーリーラインが私のもろ好みなので、ぜひぜひ続きが読みたいです。
それにしても、本の魅力を上手に感じとって伝えられるような同調者に私はなりたいよ、とほほ。
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