銀盤カレイドスコープ⑨

銀盤カレイドスコープ⑨  Amazon
燃える⑩
海原零銀盤カレイドスコープ〈vol.9〉シンデレラ・プログラム:Say it ain’t so (集英社スーパーダッシュ文庫)集英社,2006


シリーズ最終巻。100億ドルの美貌を誇るフィギュアスケーター・タズサが、女王のリアに挑戦します。前巻の続きで、オリンピックのフリー演技から。
キャンドルや響子、ドミニクなどがそれぞれの持ち味を生かし高得点を重ねる中、リアの新フリープログラムが披露されます。カラーイラストを見たときから嫌な予感はしてたんだけど、人間ではなく人形になってしまった演技にはやっぱりぞっとしました。
素人の私でさえ心臓をギュッと握られているような感じになるくらいだし、用いられている技術の高さを見抜くことができてしまうタズサにしてみれば、死刑宣告みたいなものだったんでしょうね。
しかも、タズサはそのリアの演技の直後に立ち向かっていかなきゃいけないんですから、まさに悪夢でしかないんだろうな。最終巻だし、と甘えた気持ちでいた自分が痛かった。


キャンドルとの対面とか、サーシャに抱きついたりとか、中盤は重々しい展開が続きます。前巻の感想で、「ここまで追い込まれたタズサは初めてのように思う」と書いたけど、最後の最後でそれ以上のものが来るとは、思いもよりませんでしたよ。
剣闘士のガブリーの心のうちとか「ガラスの靴が履けるのは私だけ」とかマイヤの昔話やアドバイスがあったりもしました。
タズサにかかる重圧が強ければ強くなっていくほど、私の思い入れがさらに強くなっていくのは皮肉なものです。タズサの決心とかも聞きたくなかった。


勝負は時の運といいますが、本当に何がどう転ぶのか予測つかない。確実にいえるのは、動かないと何も起こらないってことくらい。
シリーズ自体が面白かったけれど、最終巻は本当にすばらしかった。スケーター・タズサの生き様を、多くの人に読んでもらいたいものです。


海原零さんの作品感想