スロー・リーディング その20

・59〜61ページ
「あれは、お父さんが死んでから、数ヶ月たったころだった」「和人は、死んだお父さんに似ていた」「情けない話だ……。死んだ父親の面影を追って、似た風貌の少年を恋人にするとは」
この辺りの流れは、ちょっと未明にカチンとくるように思う。ここまでそれぞれ癖があるものの、好意的に描かれていたお姉ちゃんと和人が明らかに下に見られているから。
視線が止まってしまう感じがするので、次の文章のインパクトを強めるためなのかなとも考えました。未明の根底にあるのは、特定個人ではなく、自分を含めた人間全体への諦め。
「結局のところ、人間は人間でしかない。その行動は欲望や感情に支配されている。喉が渇けば、泥水だって飲んでしまうのだ」
周りの目を気にせず、常識的でない、感情に任せた行動に対して嫌悪感を持っている様子。毛布おばけとなる行動もこれに含まれそうですが、そういうニュアンスは感じられませんでした。
「同じような枠は、きっとお姉ちゃんにもあったのだろう」「なんでもできるお姉ちゃんであるために、お姉ちゃんはお姉ちゃんなりに息苦しい思いをしていたのだ」
自分にはできないと、何でも簡単に線を引いて、枠にはめてしまう未明。同じような枠を持ったお姉ちゃんが息苦しいだろうと推測しているので、未明も線を引く行為に息苦しさは感じていたみたいです。