スロー・リーディング その19
- 作者: 橋本紡,ヤスダスズヒト
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2002/12
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 16回
- この商品を含むブログ (98件) を見る
△『和人は予告どおり京都駅で穴子寿司を買い、新幹線が動き出すとさっそく食べはじめた』
このとき未明はお腹がいっぱいなので食べませんが、橋本さんの作品だとどうしても食べる描写が気になってしまいます。あとでこの一編の間に出てきた料理を調べてみたい。
★『諦観』
ヤフー辞書より。1・本質を見極めること 2・あきらめ悟って超然とすること。 和人の発言の意味としては2でしょう。波子さんと父親の関係は納得いかなくても、二人が嫌いなわけではないのが逆に歯がゆい。
綺麗にまとめているのがその後に続く文章「母親に対する思いと、父親に対する思いと、波子さんに対する思い、それらをきれいに折りあわせることなど不可能だった」
△『あたしはどう言っていいかわからなかった。 なにを言っても、それが答えにならないことは、あたしも和人もわかっていた』
『だから、和人はそんなふうに言って会話打ち切りを宣言するなり、目を閉じて眠ってしまった』
もちろん和人が波子さんを未明に紹介したきっかけは、未明を泣かせてしまったお詫びです。ただ自分でも持て余している問題を、未明にも知ってもらいたかったのかもしれませんね。
ここまで見てきて、出てきている大きな問題3つ。
1、未明のお姉ちゃんが毛布おばけ
2、未明の好きな人が真琴ちゃん
3、和人の父親の愛人が波子さん
三つともそれぞれの理由で時間が解決するものではないと薄々感じつつ、現状維持を選択しています。波子さんのお告げ通りならば、2の問題解決へ踏み出せば1の問題も変化があるとのこと。なんとなく3も連動しそうな印象も受けるのですがどうでしょう。