スロー・リーディング その18

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△『和人の声には、あたしに対する憤りのようなものがこもっていた
自分で勝手に線引きする未明へのセリフに対して。憤りという強い表現の印象から、自分自身へのいらだちも含まれているようにも思われます。あるいは未明への強い期待みたいなものかもですが。
△『「未明さんの行動で、あなたの恋人の状態は変化するわ。未明さん、あなたが踏み出せば、それがきっかけになる。というか、停滞の原因は、あなたの中にもあるわ」
△『波子さんの顔には、なぜか悲しそうな表情が宿っていた
勘のいい波子さんの診断結果。もちろんここでのあなたの恋人は毛布おばけである未明のお姉ちゃん。停滞というのは、お姉ちゃんが毛布おばけになること、つまりお父さんの死の哀しみを乗り越えられていないことと推測。
その原因が未明にあるというのも意味深です。普通に考えれば、未明が自分の中で勝手に全て消化してしまうことが原因でしょう。
波子さんが悲しそうな顔をしていたのは、1人で消化せざるを得なかった未明の境遇に対する同情かな。もう一歩踏み込んで、どんなことにも線引きしている自分自身に気づいていない未明への哀れみの感情。
しかし、なんとなくここ矛盾しているような気がします。未明が初対面の波子さんに、お姉ちゃんが毛布おばけであることの話をするとは思えない。
そうなると、和人が事前に波子さんに話してないとおかしい気がするのですが、未明を和人のガールフレンドと誤解していたのが気になるところ。はっきりと口にしているので、勘ではなさそうですし。