スロー・リーディング その13
- 作者: 橋本紡,ヤスダスズヒト
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2002/12
- メディア: 文庫
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☆「にっこりとあたしに微笑んだ。」
波子さんとの初対面時の様子。「あたしににっこり」とではないのは、どちらか言えば「あたしに微笑んだ」ことを強調したいから?
☆「美人の微笑みは偉大だということを、あたしはその時、思い知った」
これも順番が逆になっているのは、このとき初めて思い知ったことの強調。またこのことから、波子さんは未明がこれまで見たことのない美人(の微笑み)であることが再度理解できます。お姉さんも美人だという描写がありましたが、家族なのでノーカンかな。
△「おい、とあたしは心の中で突っ込んだ。おまえは三時間前に駅弁を平らげたばかりだろう」
普段の未明だったら口に出して突っ込むのでしょうが、見知らぬ人の家ということで緊張中。逆に和人は思いっきりリラックスしています。
★「いたいけな感じがして」
いたいけな……goo辞書より。幼気な。子供などの痛々しく、いじらしいさま。幼くてかわいらしいさま。
☆「でも、波子さんはお断りしますって言ったんだ。それがさ、やけに毅然としてたんだよな。愛人の負い目とかまったくない感じでさ、あたしはあなたのお父さんを愛しているので、それはできませんって」
同じ出来事を反復することで、和人の驚きがじわじわと伝わってきます。というか、父親の愛人と対峙しておいて淡々としているし、波子さんが悪い人には思えないし……。
今読み返してみると、中高生メインのラノベの現代を舞台にした作品なのに、結構吹っ飛んだことしてたんだな〜。まあこれでうまく行っているのだから、ある種ファンタジー風味ともいえるかな。
☆「適当にごまかすとか、怒って追い払うとかじゃなくて……ひとりの人間として、対等にさ。」
対等に扱われたことが、よほど和人の心に響いたことがうかがえます。また、この後の文章で未明もそれに共感しています。