スロー・リーディング その12

・41〜45ページ
「なのに、和人は不機嫌そうにあたしを睨んだ。」
京都駅で乗り過ごしそうになった和人を起こしてあげたことに対する和人の反応。
和人のお調子者っぽい一面を強調、キャラ付けとしての文章でもあるのでしょうが、それ以上に後半の文章との対比効果を狙ったのかも。
△「知る人ぞ知る店なんだよ
△「和人はタクシーを拾った
△「一見さんお断り! っていう感じの料亭
電車内でのやり取りのように、普段通り気ままで勝手な和人ではあるけれども、(少なくとも未明にとって)見知らぬ土地・京都でいつもと違う一面を見せられることで、和人の謎が一層深まった印象。
地元でもないのに観光客用ではないお弁当屋さんを知っている→高校生のくせにタクシーを拾う→高級和食料理店に足を踏み入れる……と徐々にレベルを上げていることで、その効果も増してるかな。


☆「あたしは驚いた。  美人なのだ。  もう、とんでもなく。
いよいよ黒幕(?)の波子さんが登場します。未明の初対面にの感想が3行に分けられて表現されています。もちろんまとめようとすれば、「もう、とんでもなく美人なので、あたしは驚いた」と1行で書けるでしょうが、よほどインパクトがあったのでしょう。
この後、波子さんの容姿が未明の視点で描写されていますが、それ以上にこの3行の存在が重要かと。
△「あたしもこれくらいきれいだったら人生楽だったろうなあ
確か波子さんの境遇は「楽」ではなかったように思うのでメモ。……ちなみに、この本すごく好きだったはずなのに、このページ読むまで波子さんの存在をすっかり忘れていたのは私です。